作品詳細
凛々しい骨格と尊厳のある外皮
狭小地に建つ開口部が大きく、周囲と透明なガラスの外皮でつながり、地域に開けた建築…言葉はやさしく、現実は厳しい。こういったコンセプトは本当の意味で計画のコンテキストによる。住まい手と生活像はもちろん周囲の理解、土地の歴史や文脈によりはじめて成立する。計画者も何度もその可能性を考えた。考えたからこそ、逆行した考えが最終的に導かれた。ここに住む人達は自らの交流と生活をさらけ出したいのか。おそらくそうではないだろう。幾度も現地へ足を運んだ。この場所の住民は限られたプライバシーをこれまでも切磋琢磨しながら城壁のように築き上げてきたと感じた。この場所に「物理的に開く」ということは暴力的だと感じた。この場所には「軒下のコミュニティ」や「住民と交流する土間」のようなものは優先されるものではない。まずは凛々しい骨格と生活を守護する外皮が必要だ。窓からは光こそ取り入れ、風景を取り込む必要はない。この場所にはまだ風景がない。風景は地域で作られるものだ。この計画は始まりのきっかけにすぎない。
将来この周辺住居の更新の際、限られたセットバック空間にこのプロジェクトをきっかけにデザインコードが生まれ風景が作られることを期待したい。その先にこそ、この地域が本当の意味で「都市の更新」に成功した将来が待っているだろう。この先の建物更新に携われることを切に願う。
白井 純平
株式会社白井一級建築士事務所
群馬県 東京都
HP:https://www.shirai-architects.com/
“TAG a new value on project” = “価値創造し定着させる”
TAGとは英語で商品などに名称や価値を示す札を意味します。建物のデザインや計画によっては周辺環境の治安や不動産価値をも変動させることがあります。私達は建築や空間により生まれる効果を考えることを重要視しています。”価値創造し定着させる(TAG)”という設計哲学は建築主をはじめ、地域の人々に寄与する姿勢を表しています。