作品詳細
クライアントは2人とも小学校の先生というまだ若いご夫婦ですが、「夫婦で『江戸東京たてもの園』にある『前川國男邸』に感激し、自分たちの住む夢の家はこんな空気感(コンセプト)の家が良いんです!」と、しっかりした、しかし少しハードルの高い希望がありました。建築家・前川國男が1942年に自邸として建てたその家は、私自身も理想とするものです。太陽の光が眩しいほどに入るリビングには高さが4.5mほどと絶妙に抑えられた吹抜けがあり、その空間の東側に小屋裏のような2階に上る軽快な階段が見えるのが特徴です。また、リビングから大窓を通して庭や空に大きく繋がり広がっていくような開放感があり、1階部分には、障子襖が目隠しとして、そして光を柔らかく通す道具として存在しています。
もちろんこのような『形』をそのままコピーをするのではなく、ご夫婦が感じた居心地の良さを共有し、その上で、ここで生きるご夫婦の考えや暮らし方、状況などをたっぷり話し合い、土地の持つポテンシャル(可能性と独特の特徴)を加味し、そこに更にアグラ設計室のテイストを加えたプランを提案しました。
仕上げは、床はカラマツ、天井や枠材などはスギ、家具はタモとシナ、床の間にはクリ、軒がレッドシダー、内外壁はシラス塗り。自然の素材たちに包まれています。夏の風通しがとても良く、またセルロースファイバー断熱、基礎内断熱及び床下エアコン等を駆使し、今年の冬も床下用の6帖用一般壁掛けエアコン一つで全館が暖かいとのことです。
広さ;延床面積・・・1階82.06㎡+2階42.72㎡= 128.78㎡(37.75坪)
ロケーション;住宅地(ただし、三方を田に囲まれている。)
部屋数;LDK+茶室+水屋+寝室+子供室2室= 6室
斉藤 和人
アグラ設計室
三重県四日市市松本4丁目10-4
URL:https://agra-designroom.com
三重県伊勢市生まれ。大学在学中に一年間シアトルに留学(遊学?)し、以降、大学卒業までにアルバイトをしてはアメリカ・カナダ・アラスカ等にて大型バイク・アメ車での大きな冒険旅行を繰り返し、世界の大きさと自然の偉大さを知る。卒業後は、清水建設株式会社に入社。都内で大型事業用物件の現場管理者として就業し、S造・RC造・SRC造の施工監理と、毎日数百人という作業員管理等、現実の建築界の幅の広い経験を持つ。その後、念願の住宅建築修行のため単身スペイン・アンダルシアに渡り、マラガ、カディスという街で住民として生活。この時期に現在のアグラ設計室の基盤といえる設計術・設計思想を培う。帰国後、小倉市の㈱豊川建築研究所(丹下健三系設計事務所)に入所し、戸建住宅や店舗などの設計監理業務を担当。その後は、集合住宅の設計監理や開発などの申請業務を経験。2007年『アグラ設計室一級建築士事務所』を設立。スペイン生活で感じた生きる事・暮らすことの楽しさと、また海外で生活をしたからこそ改めて感じる【和】の良さ・木造の心地良さを突き詰め、日本人に合った【木造の和モダン住宅】を、ちょっぴりスペインテイストを入れて提案している。趣味は、薪ストーブ。毎冬チェーンソーを担いで山に伐採に入るところから、このナチュラルな暖房器具を楽しんでいる・・・。