作品詳細
建築場所は、帆柱山に源を発し洞海湾へ注ぐ金山川沿いで、都市公園「瀬板の森公園」を中心に良好な市街地環境形成をはかる地区計画の住宅専用地に位置します。計画にあたっては、建築主の住宅や生活への想いを実現させることとこの周辺環境を尊重しながら住宅はどう向き合うべきかが大きなテーマでした。まずは、敷地が充分な広さであったことから、建築主からの平屋建てのご要望も相まって周辺から遊離することのない建物の高さをおさえた水平方向にのびのびした建築を思い描きました。住宅の形態は、一部2階のほぼ平屋とし外壁をセットバックさせ、東西両面を軒方向とした大きな切妻屋根で全体を覆ったもの。その軒高さは、低くすることで夏期の斜光受面を少なくし、周囲への視覚的な圧迫感を抑えることにしたのです。特に川側は、遊歩道から花壇、コンクリート打放し塀、東庭、軒下空間とし周辺と内部までをなだらかな断面で連続させ、外部仕上げも外壁の鏝押えの漆喰系塗壁や補修なしのコンクリート打放し塀で表情のある素材を用い、量と質のグラデーションで周りの環境と住宅の存在を凹凸なく馴染ませることにしました。
計画地:福岡県北九州市
用途:専用住宅
階数:地上2階
構造:木造一部鉄骨造
延床面積:232 ㎡
撮影:イクマサトシ
池下 成次
池下成次建築設計室一級建築士事務所
福岡県
https://ikeshita-archi.com/
いつも設計で心がけていることは空間や環境を豊かにしたい、心地よくしたいということです。建築はクライアントからのご要望やその敷地のロケーション、気候風土、地域性、社会性、法的要件、経済性、用途に求められる機能性や維持管理などさまざまな条件より築き上げていきます。そんな複雑で絡み合う条件の中で、どういうことが「豊かで心地よさ」につながるかを拠りどころにし、その方向性を皆さんと共有しながら柔軟に設計します。