取材前にホームページを拝見していると、白!白!黒!と濃淡がはっきりした素敵な家が多い印象。屋根もシンプルで無駄がない。何故このスタイルに辿り着いたのか気になりながら、取材を開始。
建築家を目指したきっかけ
高校生の時は放送部でNHKなどの放送コンクールに作品を出品したりしていました。大学受験の頃、1つ上の先輩と一緒に会社をつくって、動画に関する活動を始めました。活動しながら大学には行っておくべきだと思い、理系の方が得意だったため、東京理科大学の工学部2部に進学し、昼間は会社の活動、夜は学校に通いました。学科は建築・電気・機械の3つが有り、その中から人間らしさがあり面白く感じた建築を選びました。
しばらくして、会社は軌道に乗らず、先輩も放送関係仕事に就職したため、建築模型屋でアルバイトを始めました。面接したその日に、大手建設会社の設計部に常駐して、模型づくりをしてくださいと言われました。出向で行ったため、設計部の人からは学生アルバイトとしてではなく、プロの模型屋として見られ、一生懸命模型づくりに取り組んでいくうちに、どんどん上達していきました。そのため、学校の設計製図の課題は段々上手になり、卒業制作では成績は1番でした。
就職の際、すでに独立は視野に入れていました。小学生の頃、父が自らデザインした物を販売する事にチャレンジしていたことに影響されたのか、自分が作ったもので商売していきたいとその当時から思っていました。
就職先はデザイン性で好きになった、早川邦彦氏の所で働くことになりました。バブル崩壊の時期だったため、担当した中で唯一、東京の清掃工場だけが竣工しましたが、他の物は全て建ちませんでした。その後は、独立をする先輩に誘われて、インターデザインアソシエイツで9年間、住宅からビルまで設計させていただきました。そんな中、前出の高校時代の先輩から住宅の設計依頼があり、その家は建築雑誌に複数掲載され、それを見た方から多数の設計依頼があり、独立することになりました。その後も最初の作品を見たお客様の問い合わせが続いたため、切妻屋根と無駄のないこのスタイルで様々なパターンをつくり出してみようと思いました。
設計の拘り
先輩のために設計した最初の作品はフリープランの建売住宅で、主にコストを下げるためにシンプルな切妻屋根と白を基調としたデザインにしました。しかしそれが、自身のスタイルとなったのには理由があります。自然の光を一番感じられるのは白。白であれば、朝は赤みがかった光、昼は白っぽい光、夜は青みがかった光等その時期、その時間の自然の光を感じ取ることができます。美術館は作品が際立つように白い壁になっていますよね。家も同じでお客様の持っている家具が際立つためには白がお勧めです。そして、白の対比で色がない黒も使用し、白黒のスタイルを最初に生み出しました。
建物探訪でも15回作品が放送されました。元々の夢と異なる形ではありましたが、メディアでの発信ができたことはとても嬉しかったです。
編集後記
石川さんの設計はとにかくシンプルでスタイリッシュ。コストをなるべく抑えて、建築家とオシャレな住宅を建てることができます。予算はあまりかけられないと思って諦めかけている方は1度石川さんに相談してみてください。放送部の名残なのか優しく落ち着いた口調で取材に答えてくださいました。
石川さん、ありがとうございました。(廣瀬)