社名であるihrmkは井原のi(井)hr(原)正揮さんのmと佳代さんのkです。
事務所のあるRC造の「はつせ三田」は全て異なるプランの13の住戸が入っています。インナーテラスや共有階段を抜ける光や風により内部のような外部のような明るさを持つ空間が広がります。こちらの集合住宅は井原さんご夫妻で設計。お二人の共同設計をお伺いする取材を開始しました。
建築家になったきっかけ
正揮さん:
通っていた幼稚園では、近くの材木屋から貰った端材と釘で木工遊びをしていました。その記憶から、モノの手触りや見た目の陰影に関心を持つようになり、建築学科に進学、学んでいくうちに建築の楽しさを知りました。
佳代さん:
小学生の頃から、建築関係の仕事をしている親戚の影響もあって、折り込みチラシや不動産屋に貼ってある間取りを見るのが好きで
した。美術やインテリアにも興味があり、自ずと建築学科に進学。正揮とは勤務先だったシーラカンスアンドアソシエイツで出会いました。こちらの事務所と並行して、神奈川大学とICSカレッジオブアーツの非常勤講師をしています。建築と室内の構築に関する授業を受け持っています。
住宅設計の拘り
正揮さん:
お客様との打ち合わせは2人で参加し、一方的にプランを提案するのではなく、密にコミュニケーションを取って、共同で設計をします。方向性や考えは必ず言葉にして共有し、進むべき方向を迷わないように心掛けています。
設計で心掛けていることは今の状態や要望に答えるのではなく、必ず将来を見据えることです。例えば、家族が増えたり独立して減ったりすることも考え、子供部屋として利用できるための余白の空間をつくったりすることで、住まいがお客様の人生の変化に対応することができます。
「バイパスの湾処」は、奥様が長年やりたかったカフェを併設した住宅です。様々なお客様が長く継続して訪れてくださるよう、椅子席や床座席、風の通る半テラスの席と色んな空間を設けました。当時はコロナ渦3密だったので、半テラスの席を多くの方にご利用頂くこととなりました。現在はお料理の美味しさも相まって、多くのお客様にご利用頂く人気店になっています。建物は建てたら終わりではなく、何十年先までも建物とお客様とのお付き合いを深めていきたいです。
佳代さん:
敷地に必ず足を運んで、そこから見える風景や空気、人々などの周辺環境や、その土地の文化や歴史を調査した上で設計しています。お客様とのコミュニケーションを大切にし、共に楽しみながら、家づくりをしていきたいです。
「milke」は東京で15年美容師をされていたご夫婦が長野にUターンして新しく開店した美容院で、農業用のプレハブ倉庫を再利用する計画としました。農地の中に建っていたため、農地転用、宅地へ登記を変更する必要があったのですが、その審査が年1回ということで、結局設計契約してから完成までに3年を要した案件ですね。他にも最長で5年かかったものもありました。
様々な状況にも対応し、納得していただけるまで、とことんお付き合いします。
お仕事のやりがい
正揮さん:
お客様が悩まれていることに対し、こちらから提案したことが、後のお客様の生活の中で、これで良かったと実感頂いたことや、ご友人を自宅に招いた際、空間に驚かれていたなどの設計のをポジティブなフィードバックをいただいた時にはとてもやりがいを感じます。
佳代さん:
お客様と時間を掛けつくりあげた建物だからこそ、実際にお住まいになって、とても喜んでいただけることが嬉しいです。また、アワードに応募した作品が、受賞した際にはとてもやりがいを感じました。
今後目指すもの
正樹さん:
現在は住宅が中心ですが、より多くの人に良い空間を感じていただきたいため、公共施設や商業施設も積極的に行っていきたいです。
佳代さん:
地域の方々のコミュニティの場や、旅行先で立ち寄れる道の駅等、多くの方が利用する建物を設計をしてみたいです。
編集後記
設計期間はこれまで取材をしてきて最長!お二人お客様との設計を心からとても楽しんでいらしゃるからこそ寄り添いとことんお付き合いができるのだと感じました。
正揮さん、佳代さんは日頃から、お仕事の進め方や考え、将来のことなどをしっかり共有されていて、一方が質問に回答すると、「そうそう」というシーンが度々ありました。そんなお二人が設計する商業施設や公共施設に訪れられる日を心待ちにしています。 正揮さん、佳代さん、ありがとうございました。(廣瀬)