本⽇の取材でお伺いしたのは、新橋にある「ワイン蔵 TOKYO」。カリフォルニアワイン専門のバーで、⽵内さんが設計されました。照明で深紅に映る家具とお店の中⼼にある⼤きなワインセラーが素敵な雰囲気を醸し出しています。
建築家を⽬指したきっかけ
⼩学⽣の時、TV にて放映していた「なるほど!ザ・ワールド」が⼤好きで、バルセロナオリンピックの頃でスペインを特集していて。その中でサグラダ・ファミリアが映し出された時、衝撃を受けたことを今でも覚えています。それから建築に興味を持つようになりました。小学校からの一貫教育校に在籍していましたが、その⼤学には建築学科がなく、進学をどうしたものかと叔⽗の友人の建築家、室伏次郎さんに相談をしたところ、一貫校の友⼈関係は社会に出ても財産だよ、との助言を得て安心してしまい、大学受験はせず、そのまま卒業してしまいました。
その後、アメリカの大学院へ留学して建築を学ぶのですが、修士課程修了後、講師であった中国⼈建築家の事務所MADA s.p.a.m.で働かないかと誘われて、上海で人生初の設計事務所勤務を始めました。その後⽇本に戻り、⾕⼝建築設計研究所で勤務しました。スイス、バーゼルのノヴァルティス製薬のオフィス・研究所、石川県の片山津温泉総湯の設計等を担当した後、独⽴しました。独⽴後、最初の仕事は両親の⾃宅であるマンションの改修でした。その後も星野リゾートの界加賀の設計や OM ソーラーを搭載した住宅も⼿掛けました。
設計への拘り
開⼝部や照明等、光による演出に工夫をしています。ここ、ワイン蔵TOKYOさんの鏡は、光源を露出していない「女優ミラー」として、上品に見せています。鏡部分がグラデーションになっており、透明の範囲にフロストのフィルムを貼り、その裏に光源がある仕組みです。また、カウンター背後のワイングラスを並べる 2 枚の棚は両端のみ固定し壁から隙間をとり、中央は天井からのワイヤで垂れを防ぎ、下からの光で壁を照らすことで浮遊感を出しています。ワインセラーは、お店のどこからも⾒ることができ、ワインを並べると⾊とりどりのキャップシールがガラス越しに映えて、思わぬ効果があってよかったです。
仕事のやりがい
お客様のご要望に従って何か軸となる考えを決めて、それに従って細かいところ、納まりや材料を決めていくところ、また、なるべく別々の要素を兼ねて余計なものを省いていく作業にやりがいを感じています。阿佐ヶ⾕の家では、OMソーラー(株)のOMX を導⼊しました。OMX は太陽熱とヒートポンプで、冷暖房・給湯・熱交換換気を 1 台で賄うシステムです。暖房は床面、冷房は壁面の吹出口から⾵が吹き、年間を通して室温を⾃動制御するため、エアコンのオンオフの動作と送風の不快感がありません。また、道路と玄関の間は階段がありますが、東側の植込み部分が斜路にもできるようにして、将来は完璧にバリアフリー生活ができる設計です。1 階のリビング・ダイニングは建物を南北に貫くがらんどうな空間とし、家の中⼼となるよう設計しました。室内建具をすべて引⼾とし、窓を開けることで家全体の通風が可能です。外観には特殊性を出さず、機能は OMX の最新技術を備えた「ハイテク⺠家」とも⾔えます。
編集後記
今回のお話をお伺いする中で、⼈⽣のターニングポイントとして登場する、⼤学教授である叔⽗様。栄澂(えいす)建築の澂という⽂字も叔⽗様のお名前の⼀⽂字を頂いています。師となる⽅からの思想や⽣き⽅が、建築界の探求者であるガウディの作品性への共感や海外にてご活躍になる原点なのかもしれません。
⽵内さん、ありがとうございました(廣瀬)