作品詳細
敷地は山形県酒田市。
東北地方を縦断する主要幹線国道からほど近い、古くからある閑静な住宅地に夫婦2人と子供達が暮らす家を計画した。
求められた事は、家族を構成する個々人間の適度な距離感。
すなわちそれは、お互いの気配は感じつつもお互いの自由な居方が許容されるような暮らしのイメージ。
100坪の大きな敷地に3戸のタワーを散在させて、それらをタワーの中間レベルにおいて深い軒で繋いだ。
各タワー間の行き来には必ず土間やテラスといった、その深い軒下を介す。
また、3戸のタワーを構造的に水平拘束するために深い軒は室内にまで入り込み、内庇(天井リブ)となり、2階床とは異なるレベルのもう1つの水平面として、各タワーの垂直方向に立体的な奥行きを生んでいる。
各タワーはおのおのに階段や梯子をもち上下階の行き来には、内庇(天井リブ)と2階の間(あいだ)という特別の機能を持たない「もうひとつの階」を介すこととなる。
こういった構成により、どこにいても平面的にそして立体的に「介す場」をもち、「軒下」や「もうひとつの階」の向こう側に家族の誰かが居て何かをしているといった、距離を感じそして距離を選択出来る暮らしを実現している。
更に、どこにいても向こう側がのぞくということで、屋内と屋外といった隔たりもまた1つの向こう側として在り、その境界を緩く曖昧なものとすることが出来ているように思う。
夫婦、そして子供達はそれぞれに籠った自分の場を家のどこか向こう側に持ち、そして食事や家族団欒といった繋がりを求める時には大きな庭に面したリビングに集う。
そんな小さな集落のような共同体のような1戸建ての家を提案している。
各自が色々な趣味や活動をもち、お互いの時間を大切にしているこの家族には、この距離感が適度らしい。
竣工 :2015.12
種別 :新築
用途 :住宅
規模 :116.6㎡
構造 :木造
所在 :山形県酒田市みずほ
設計 :東海林健建築設計事務所(担当 間 遼一)
構造設計:田中哲也建築構造計画(担当 田中)
施工 :加藤組(担当 小林)
撮影 :©村井 勇
東海林 健
株式会社 東海林健 建築設計事務所
新潟県
HP:https://takerushoji.jp/
住宅、商業空間、公共空間と求められる機能が変わっても、その要望を解き答えるだけではなく、その空間に居る事自体が快適であること。
また建物を外から眺める事自体が快適であること。
新しい建物が建つ事で建物の所有者や使用者はもちろん、近隣の人やたまたま通った人にまでも豊かな気分や固有の価値体験を提供できたらと考えています。
結局作るのは何であれ、開かれた環境を目指しているのではないでしょうか。
単にそれは大きく開放されたという意味ではなく、人間と釣合いの取れた、更には生き物として快適な場所や時間ということだと思います。
機能的とか便利とかとはちょっと違う。
すごくそれはボンヤリとしたものではありますが、私達にとってはそのボンヤリが現在のデザインの対象であると考えています。