作品紹介
無垢の肌触りと空間の優しさ
旧北陸道沿いにある高岡市横田町は、近世には町家が建ち並んでいた。そのなごりから土地の区画はほとんどが細長い、ウナギの寝床状である。この家の敷地も約12m×31mと細長い。また、この土地に元々あった家屋は隣家に接して建てられていたようであり、隣家は敷地に面した窓をほぼ持たず、敷地境界線上に建っている。そのため、2階建て分の高い板金張りの壁に左右から挟まれるような敷地で、歴史を感じる地域のスキマ空間だった。
初めて敷地を訪れた時、ここに建つ建築は、過去を踏襲するには気負いする居たたまれなさを感じた一方で、現代性を追求するのでは気恥ずかしい切なさを感じた。この地にはどこかゆっくりと時の流れる優しい家が合うと思った。
この地に合う家とするため、街道の喧噪を感じないように内側に開いた空間を作ることでプライバシーを確保しつつ、凛とした外観の容姿で施主がこの地に住む決意の力強さを表すことを目指した。平面は中庭に面して囲むように所要室を配置したコートハウス形式とした。中庭に落ちる日の影の移ろいにより、一日の時の流れを感じ取れる。立面は2階建てであっても平屋のような高さを確保したファサードとした。外部の仕上げは無垢杉の羽目板張りと塗り壁により、以前からこの地に建っているかのような佇まいを表現した。内部の仕上げには、杉の無垢材を多用し、その肌触りや表情の柔らかさによって、空間自体に優しさを加えている。その無垢の質感がゆっくりとした時の流れを醸し出している。
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物件情報
所在地 :富山県高岡市
竣工 :2017年7月
規模・構造:木造・2階建て
敷地面積 :364.10㎡
建築面積 :116.83㎡
延床面積 :138.44㎡(41.88坪)
濱田 修
濱田修建築研究所
富山県
HP:http://w2322.nsk.ne.jp/~hamada-a.a/