作品紹介
富山県射水市中太閤山における木造2階建ての新築住宅である。敷地は50年前より富山市や高岡市のベッドタウンとして開発が行われた住宅団地の中にある。この地域は宅地が整然と配置された中にも豊かな緑が点在しており、敷地北側にも団地内に高低差3mを生む幅20m、長さ600mを超える法面上の公共緑地帯が隣接していた。
施主はアウトドア好きの若夫婦で、敷地購入の決め手となったものが隣接した緑地帯である。この緑地帯によって北側低位置の住宅地の気配を全く感じさせなかった。敷地面積70坪前後の住宅団地の密集感が緑地帯の存在をより強調しており、これを建築の手掛かりとした。
緑地帯との関係
建築に緑地帯の風景を取り入れるため、前面道路から緑地帯までの通り抜けを設けた。また、壁面の構成は緑地帯と共鳴する素材を模索した。そして、割肌を残す石積みを見い出し、より原始的な石籠(蛇篭)とした。建築本体の壁面も焼杉掻き落しの板割りにすることで、全体的に時を経た建築の佇まいとなった。平面計画は北側緑地帯への開放に重点をおいた。採光は吹き抜け上部の南側ハイサイドライトから取り入れている。北側にある樹木は、逆光にならずいつもクリアーな風景になり、豊かな自然を借景した、瑞々しい生活をもたらせてくれる。
自然と共に暮らす
完成してから数か月が経ってこの住宅を訪れた時、数年来、施主たちがこの家で生活をしているような感覚を受けた。それは、施主の趣味や趣向がこの住宅と同調出来ているからではないかと思う。土間で自転車を整備し、スキーをチューンナップする。テラスで薪を割り、石籠を利用した薪棚兼目隠し塀にストックする。樹木の見えるキッチンでお茶を入れ、ストーブの横で飲む。想像した様々なシーンが実際に行われていたからだ。全ては施主の緑地帯への想いから始まった建築づくりであったと思う。石籠(蛇篭)や焼杉板などの自然と素材を受け入れる施主の寛容性に導かれた建築である。
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物件情報
所在地 :富山県射水市
竣工 :2017年12月
規模・構造:木造・2階建て
敷地面積 :262.42㎡
建築面積 :119.86㎡
延床面積 :130.74㎡(39.55坪)
濱田 修
濱田修建築研究所
富山県
HP:http://w2322.nsk.ne.jp/~hamada-a.a/