作品詳細
~弧を描く壁の家~
お施主さまも、主にビル等の設計を手掛けられる一級建築士でした。
それまでは中古で購入された木造住宅に住まわれており、同じ場所での建て替えと、変化に富んだ豊かで明るい住空間と構造はRC造でつくりたい、がご要望でした。
初めて現地確認に行った際、偶然、近所の保育園児が日課としている散歩と出会いました。しばらく眺めていると、道路には歩道が無く生垣や塀によって見通しが悪かった角地を、引率の先生方が車に注意しながら大廻りに進んでいく光景が目に飛び込んできました。その瞬間、敷地の角をこの子達の安全性の確保のために外壁と目隠し塀を兼ね見通しがきくカーブ(弧)を描いた壁による建築の姿がごく自然に浮かびました。
カーテン類の必要の無い開放的な暮らしが実現と、熊本は西日の日差しが強い地域であり、真南の日射であれば太陽の高度から庇を設けることで日射制御はできますが、高度が低い西日の強い日差しに対しては壁によって制御をする必要があるため、弧の壁の膨らみと内部空間との距離が、南から西にかけて狭めることでパッシブデザインの考えを取り入れ、室内環境の形成からも効果的になっています。
また、強い日差しを直接室内に取り込むのでは無く、近隣の視線を遮りつつ居室の外気負荷を抑えるよう、弧の壁の裏側に階段や坪庭・テラスなどを設けて、その空間で一旦日光を受け、そこで拡散された間接光のようなやさしい光が、その奥に配したリビングや個室にはいるように意図しています。
<物件の情報>
広さ:199.10㎡(60.22坪)
部屋数:5LDK+S
家族構成:4人(夫婦+子2人)
ロケーション:住宅街

中村 新五
一級建築士事務所AND
熊本県
HP:https://www.and-arch.com
熊本県を拠点に、住宅に限らず多様な用途の建築物の設計デザインを行っています。
ありきたりな空間ではなく、お施主さまのまだ形になっていない想いを、専門家として具現化した住宅・建築をご提案することを目指しています。(同住宅は、前職、管理建築士時の担当プロジェクト)