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作品紹介

バージニア・リー・バートン作、『ちいさいおうち』は幼少時に何度も親に読んでもらった絵本の一つで、もともとは田園地域だった家の周囲が、都市化の波に覆われていく。そしてとうとう、排ガス、密集、喧噪のなかで住みづらくなったその場所から、家そのものが引っ越していく、というある種の寓意的な物語なのだけど、この家の設計をしているときに、なぜとはなくその絵本のことを思い出していた。田園でもなく、既に都市化された町家の密集地域なのだけど、いわゆる2項道路を前にしたヒューマンスケールの街並みをあっさりと超えて、周辺にチラホラと大きな建物が建ちはじめているのをみて、そんな昔の絵本を想起したのかも知れない。この、決して「小さい」とはいえない二階建ての家の周囲も、あるいは将来そんな建物に囲まれてしまうのではないか、そんなイメージを頭に浮かべていた。もちろんこの家はあの絵本のように引っ越すわけにも行かない。開放性、採光、通風など、さらに都市の密度が上がった場合を織り込みながら、陰影のコントラスト、グラデーションの際立つインテリアを考えてみた。2階は合掌梁で屋根を支え、ワンルームとし、天井の高さと相俟って、伸びやかな空間となっている。1階は土間玄関とし、ちょっと曖昧な空間を愉しんで貰っている。アプローチには、「和風の屋根付き門が欲しい」というご要望を、少しずらして、鉄板でシルエットだけ和風にかたどった、格子戸付門に置き換えている。

道家 洋

道家洋建築設計事務所
愛知県
https://doukehiroshi.com/


家づくりを考えてみると、いつもそれは建て主さんとの共同作業だな、と思います。わたしたちはお互い最初から答えをもっているわけでもなく、様々な条件と格闘し、迷いながら答えを探していく。デザインのお仕着せではなく、住み手の個性を引き出せるような住まい作りを目指しています。

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