取材前にホームページを拝見すると、建物だけでなく、インテリアやプロダクトのデザインを数多く手掛けられ、その中には位牌や神棚が!また、事務所に入ると白を基調としたシンプルでオシャレな空間。
今回は幅広い分野のお話をお伺い出来ればと取材を開始。
建築家になったきっかけ
高校時代、原宿からの帰り道、代々木体育館が目に留まって、血が逆流するような、もの凄い衝撃を受けました。建築家は丹下健三さん。いつか自分もこのような建物を設計できるようになりたいと思ったことがきっかけです。
工学院大学では工学部建築学科に進学、設計や建築史の授業が得意で、特に建築史では建築と当時好きだった60年代のファッションやR&B、ヒップホップを重ねて勉強することで、色々な視野が広がりました。
将来、建築家になりたいと強く思っていたため、アトリエ系の設計事務所へ就職。
十分経験を積んだ設計業務でしたが、独立後、最初に手掛けたのは家具づくり。直ぐには設計依頼がなく、まずは出来ることからやってみようと思い、始めたのがきっかけでした。家具を展示会に出展すると、自身の期待以上に高く評価を頂き、家具をきかっけに設計の仕事にも繋がっていきました。
住宅設計の拘りや心がけていること
30~40歳代のお客様が多く、工務店からご紹介頂いています。
まずは、ご要望を十分理解することが重要です。ヒアリングシートを記入していただくところから、打合せを重ねていき、その度に本質を深く掘り下げて、優先順位を考えながら整理していきます。そして、お客様のご要望を叶えるだけでなく、将来の暮らしや、風景をプラスして物語がある設計となるよう心掛けています。
そして、最終的には工務店さんや職人さんなど、その建物に携わった全ての人の思いが詰まった作品となることにやりがいを感じています。
プロダクトデザインについて
神棚は、東日本大震災時に、仮設住宅に住んでいる方々に向けて制作した作品です。その地域では漁師が多く、漁に出る前、神棚に安全祈願を行う習慣がありました。しかし、仮設住宅にはスペースの問題で、神棚を置くことが難しいため、デザインで表現することで解決できないかと福島の木材加工所から相談を受けました。神棚について調べると、受験や勝負事などの前に「神様、どうかお願いします」を念じるように、自然崇拝するのが日本の神様なのだということを知りました。そして、神棚には伊勢新宮の神様に家内安全が宿っていますが、江戸時代は伊勢までお参りすることが困難だったため、お札を祭ることで神様が守ってくれるという歴史がありました。そこで、伊勢神宮を2Dで表現し、仮設住宅でも設置できるサイズの箱にお札をしまえるデザインとしました。
このように、プロダクトデザインでは、普遍的なものに拘りや個性がでるような作品づくりをしています。
編集後記
建築とプロダクトデザイン、その両方の本質を追求することが、全てデザインに活かされて、ストーリー性のある作品が生まれているのだと感じました。水野さんへ設計を依頼すると、住宅だけでなく、家具もその家族オリジナルデザインとなります。
いつか衝撃を受けた代々木体育館のような歴史に残る建築を生み出してくれるのではないかと楽しみです!
水野さん!ありがとうございました。(廣瀬)