ロケーション

作品No

家族構成

広さ

建築家

都道府県

上高野の家 京都府

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作品詳細

上高野の家は、京都市内洛北蓮華寺に程近い、古い民家と新興の住宅とが混在する住宅地にある自邸兼事務所である。京都市内にありながら、山々に囲まれたのどかな田園風景が残っており、また北側の田畑の先には一両編成の叡山電車が走り抜ける様子を望むことができる。計画にあたっては、そうした昔からある風景に溶け込むと同時に、埋没することのないよう自立した建築にすることを大きなテーマとし、相反する考えの共存を目指した。
まず内部プランにおいては、各室が独立して機能するよう分割されたプランとしたが、これは、2階に仕事スペースがあることも踏まえ、各人が自立した生活を送ることを想像したからである。一方で、居間食堂は3間角+α、天井高約3.3mのゆったりとした空間とし、グランドピアノや薪ストーブを設えることで家族が集まる核となる空間とした。外観は、そうした独立した各室を包み込むようなシンプルな木箱として計画し、そこに単純な切妻の大屋根を架けた。家族の個人性を尊重しつつも、一つ屋根の下で暮らす共同体としての家族の在り方を考えた結果である。屋根材には三州産の切り落とし桟瓦を採用したが、それはスレートや金属板葺きの屋根によって取り替えられつつあるこの地の風景に、もう一度甍の波を紡いでいきたいという思いからである。経年とともに風合いが変わり、部分的なメンテナンスも容易な瓦の可能性を、ここからまた考え継承していきたいと思っている。
また、庭には基礎工事に伴って排出された掘削土で土手をつくり、地面は水面に見立てて砕石を敷いたが、それはこの住居が、家族が乗り込んだ一つの舟としても考えたからである。
この家の外観に目新しい要素は何もないが、上高野の地域性を考えると、その必要性もないと考えた。決して設計者の表現欲や奇抜性が出ることなく、あたかも以前からそこに在ったかのような、それでいて、地域性を継承していくような強い建築を目指した。

建物名  :上高野の家
所在   :京都市
家族構成 :夫婦+子ども2人
竣工   :2020年4月   
構造・規模:木造・2階建て
敷地面積 :248.47㎡
建築面積 :86.26㎡ 
延床面積 :129.19㎡(1階/79.50㎡ 2階/49.69㎡) 
建蔽率  :34.72%(最大50%)
容積率  :51.99%(最大80%)
地域地区 :第一種低層住居専用地域、法22条地域

安原 一成

安原一成建築設計事務所
京都府
HP:https://www.yasuhara-k.com/

■ 地域に溶け込む風景としての建築を創造する
■ 建築の形に捉われず、人の暮らしをデザインする
■ 自然素材をシンプルに用いる

世の中は、日々目まぐるしく変化しているように感じるかもしれません。しかし、人間の本質的な営みはそれほど変わっていないのではないでしょうか。「人が暮らす」とはどういうことなのか、建主との対話を通し、また自問自答を繰り返す中で、建築の形に捉われることなく真正面から向き合い続けたいと思っています。     木や土、石といった自然素材をシンプルに用い、また風や光(陰)、音、香り、そして緑といった要素をうまく建築に取り込むことで、五感を刺激するとともに風景に溶け込む、そんな建築(暮らし)を一つ一つ丁寧に設計していきたいと思っています。

 

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