世田谷の閑静な住宅街に光庭を持つ木造3階建の母と娘家族の二世帯住宅です。隣家に囲まれているため、接道する北側に光と風を導く奥に深い庭(光庭)を設けました。その庭を巡るようにそれぞれの住居を配置し、大きな窓を通して互いの気配が感じられる住まいとしました。光庭を開くことでまちとつながり共有することで家族を結ぶ長屋の計画です。
敷地は北側以外隣家に囲まれているため、建蔽率60%の余剰を北側中央に道へ繋がる奥行5mの光庭に集中させ、光庭を巡るように2つの家族のリビングやテラスを大きな開口と共に配置しました。1階は母、2~3階は娘家族としてそれぞれが独立性を保ちつつ風や光を共有しながら木々越しに互いを見守る構成です。奥に深い光庭は延焼ラインから外れ、曲面硝子や木アルミ複合サッシを用いながら柔らかい内部空間の広がりをつくります。木のぬくもりを感じる空間にするため、光庭を活かして隣地の開口制限を重視した準延焼防止建築物として空間を圧迫せず木架構の現しや木製階段を可能にしました。陽の光の角度と外壁の斜貼りタイルは呼応し、季節の移り変わりを知らせてくれます。曲面を構成する砂状塗装は自然の岩肌のような表情に。お施主様のお母様は紙で作るペーパーフラワーアート教室を定期的に開き、1階は光庭に面してギャラリーのように使われ、光庭はまちの顔となり小美術館のような佇まいとなっています。
所在地 :東京都世田谷区
用途 :長屋(2戸)
構造 :木造3階建て
延床面積:114.86m2
竣工 :2021.04
構造設計:川村構造設計室
施工 :栄伸建設
写真 :中村 絵
受賞 :German Design Award2023 Nominee
掲載 :Archdaily ,Archello, Architizer
髙橋 真未
髙橋真未建築都市設計事務所
東京都
HP:https://www.mamitakahashi.com/
住宅をつくることは周辺の木々や生物、地球環境と共存することです。例えば住宅の外皮にできるだけ自然の材料を用いることで、温度や湿度の変化に応じて調湿を行い、水分を外気へ放出して生き物のように呼吸をします。そして一人一人性格や働き方、家族の変様やライフスタイルが異なるように、そこに住まう人が今までどのように生きてきたかを知り、考えながら設計することを大切にしています。住宅の内と外の関係や視線の繋がり、家族の関係性を紡いでいきながら住宅の形にしていくことでそこで暮らす人だからこそできる住宅になります。
住宅をつくることはまちの環境をつくることであり、そのまちやコミュニティに共感した人が集まって住み続けることにより、美しいまちがつくられていくと考えています。