ロケーション

作品No

家族構成

広さ

建築家

都道府県

奄美大島の家型 鹿児島県

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作品詳細

奄美大島の集落内、ややゆったりとした道路に面する緑豊かな敷地に建つ戸建住宅である。
集落の風景を眺めた時、新しい住宅と古い民家の間には、どちらも同じ人が住むための器でありながらビルディングタイプとして明確なタイポロジーの差異が存在する。nLDKに代表される類の無駄を省いた合理的な間取り・矩形の平面・切り妻もしくは片流れの屋根・窯業サイディングによる外観等のワードに代表される新しい住宅に対し、長い廊下によって繋がれた分散的な平面計画・軒の低い入母屋屋根・色素が抜けて灰色になった木質外壁等のワードに代表される古い民家、というのが大雑把な括りであるが、この情報の羅列を見てもこれらを「人が住むための器である」というだけで同じ括りにすることに強い違和感がある。所謂「新しい住宅」はコストを抑えやすい・プレカット可能という経済的なメリットにより成立している反面、かつて島で作られてきた「古い民家」にある配置の豊かさを失わせている側面も無視できない。こういった一長一短で二極化してしまった現状の住宅の作られ方に対し、懐古主義的に過去の伝統形式をなぞるのではなく、現代の工業的な建築形式に過去の伝統的な住居が持つ因子を継承することにより新たな形式が生み出せないかと考えた。ここでは、過去と現代の平面・屋根形式のハイブリッドを試みている。
クライアントのライフスタイルは家族同士の距離が近いものであり、住宅に対する要望はどこにいても家族を感じられるような空間というものであった。完全には閉じない一繋がりの空間の中でプライバシーを調整出来るのが理想であり、それは現代の個室により分割された平面計画よりもむしろ緩やかに分節・接続が可能な古い民家に見られるような空間構成が近いものであった。かつての島の住宅において【外周を結ぶ廊下(広縁)空間】と【建具の開閉という行為】が担っていた家族内における個々人の距離のコントロール・外部空間との接続を、よりコンパクトな床面積で成立させるための空間形式を目指している。ここでは350mm下げた居間に畳間、子供の居場所、食卓、外部デッキが接続している十字路状の廊下のような空間を中心に据えた平面構成とした。交差点となる居間の周りには人が腰掛けられる奥行きの座面がまわっており、人が集まることを前提としたデザインとしている。床を350mm下げることで、立つ/座るという身体の動きにより視線の交わり方に変化が生じ、プライバシーを調節しながら暮らすことができる。また、居間の外周に配置した家具によっても空間に変化が生まれ、より細やかな関係性が生まれている。
屋根は奄美大島の古い民家に多く見られる「緩勾配の入母屋」と、新しい住宅に見られる「切妻」をハイブリッドしたような形態とした。この形態は、切妻により内部空間の最大気積を獲得すると同時に、四方に伸びる庇が外壁の劣化を防ぎつつ住宅の周りに雨除けや陰を作り出す。入母屋の隅木が持つ仕口の複雑さを回避したプレカット可能な小屋組みでありながら、かつての屋根形式が持っていた佇まいを想起させる。集落の中で自然な佇まいを持ちつつ近代の住宅にも見えるような双極性を目指している。
外構は自生の植物をほぼ手つかずに残している。建築の正面は防風林としての植物群であり、クライアントの菜園の場でもあり、バスを待つ待合所のスペースでもある、おおらかな半公共空間として定義づけ、新たにデザインをおこなった。
また敷地に生えていた巨大なアカギは、その立ち姿は魅力的なものであったが台風時に周辺住民へ被害を及ぼしているというやむを得ない事情から伐採した。その巨大な木の幹はベンチやテーブルセットなど屋外のファニチャーに形を変え今も役割を果たしている。
過去に作られたものは、当時の最先端であったかもしれない。現代において過去を無自覚に礼賛すると安易な懐古主義・ノスタルジーに陥ってしまうという懸念を感じている。今作られているものは過去からも未来にも繋がるという前提のもと、現代と過去のハイブリッド的な試行は、離島固有の文脈の継承を考える上で非常に重要であるという考えのもとで設計を行った。

意匠設計:小野良輔建築設計事務所
構造設計:円酒構造設計
施工管理:政建設
建築写真:©長谷川健太

小野 良輔

小野良輔建築設計事務所
鹿児島県
HP:https://orarchitecture.studio/

小野良輔建築設計事務所は2018年に奄美大島で設立した設計事務所です。
クライアントの要望は勿論のこと、建築の敷地にある土地の文脈や周辺環境を読み込むことで、そこにしか生まれない建築の形を大事にしています。

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