作品詳細
この家では、用途ごとに壁で空間を分割するのではなく、境界を重ね合わせる構成によって、現実を超える広がりを立ち上げようとした。
四分割された単純な平面は、一見すると同じ部屋が並ぶワンルームのように見えしかし実際には、室のつながりや開口部の配置が全体を見通させず、視線は絶えず奥へと導かれ、空間の奥行きを想起させる。領域は壁や間仕切りで明確に分けられず、余白を保ちながら重なり合い、結果として中心的な室は生まれず、離散した多視点が広がっていく。
ホールは四分割のうち二つの平面を跨いで配置され、天井高は2.1mから最大6mへと大きく変化する。
断面の高低差と光の違いが、並列する空間に異なる時間の流れをもたらす。
また、数を絞って設けられた開口部は外の風景を断片化し、全容を見せない。
中心を持たない構成と重なり合うことで、家の知覚は街へと拡張し、同時に街もまた家の内部へと反転する。
さらに、反復する平面と視線が届かない構成は、声や音は届くのに姿は見えず、遠いのに近く感じられる感覚を生む。見えなくとも気配を確かに感じることで、空間そのものの存在が想像のなかに立ち上がる。この家では、そうした想像上の奥行きや、見えないが確かに存在する空間が、日常の中に静かに立ち上がることを目指した。気配や光、音が重なり合い、現実を越えた広がりを生み出す。家という最も親密な場所が、重層的な時間や距離を内包する場であればと思う。
<物件の情報>
広さ(坪数):22坪
部屋数:4部屋
家族構成:夫婦+子供2人
ロケーション:郊外・住宅地

福田 俊
OFFICE SUGURUFUKUDA / 一級建築士事務所 福田俊建築事務所
東京都
HP:https://www.sgrfkd.net/
オフィススグルフクダは建築、内装(リノベーション、店舗など)、家具など空間に関する設計を行っています。
物としての建築の美しさ、空間体験の豊かさを大切にしています。