閑静な住宅街の中に、平屋のひときわデザイン性の高い建物、そこが羽柴さんの事務所兼ご実家です。平屋と思って中に入ると、なんと2階建て!そして様々なアイデアが玄関先からも見えてきて・・・、それらのお話をお伺いできることを楽しみに、取材を開始。
建築家を目指したきっかけ
もともとは、車やバイクのプロダクトデザインが志望で、大学に入学したのですが、友人がスペースデザインコースを選択するということで、自身も同じコースを選択。スペースデザインの課題の中で、空間や家具を考えたりすることがとても好きでした。卒業後は店舗デザイン会社へ就職。ショッピングモール等の大型な建物が多く、内装管理や設計を担当していました。
設計では様々な種類の店舗を担当させて頂きましたが、その設計図面は営業担当を介してお客様へ伝わるため、結果、図面通りのものが実現することは殆どなかったです。そこに疑問を感じてアトリエ系の設計事務所へ転職。一級建築士を取得するまで、お世話になりました。独立後、最初の作品は店舗設計でした。
設計への拘り
お客様の住まい方や心地よいとはどういうことかを十分お伺いして設計することを大切にしています。そこに重きを置いているので、設計期間は1年を頂いております。実家の設計は将来の同居も視野に入れて検討した結果、2年間かかりました。手書きの基本プランは100通り以上、結果、実家での様々なアイデアが、お客様の設計にも活かされています。
アイデア①内部の回遊性と開放感、家事と生活動線だけではなく、外部テラスを含めて建物内外を回遊できることで各スペースを最短距離で移動できる平面計画。
アイデア②リビングに吹き抜けを設けて2階との一体感を持たせる、内外装の仕上げは左官材や木板を使用することで素材感によるぬくもりを与える。
アイデア③リビングの一部の壁は左官職人久住有生氏による施工。久住氏の完成で仕上がったのは柔らかな波のうねりの模様。
アイデア④和紙の貼り方に凹凸をつけることで、光の差し込み方に変化が生まれる障子。
アイデア⑤室内の空間に合わせてデザインしたテレビボードやテーブル。
実家はモデルハウスとしても活用していて、この5つのアイデアについては多くのお客様に気に入って頂きご採用頂いています。
これからチャレンジしたいこと
一周回ってということになりますが、一級建築士の資格を活用するために、ショッピングモールのような大型な建物の設計にチャレンジしたいです。また、将来の実家での同居の為、双子の子ども達の部屋も改築という形で考えていきたいと思っております。そして、今も行っている家具のデザインは、これからはもっと多くのものを、様々な場所で手掛けていきたいです。
編集後記
ここは愛知県で、お名前は羽柴、もしかして、羽柴秀吉の末裔の方では・・・。実際お伺いしたところ、良く受けるご質問とのこと。もしかしたらそうかもしれないし、そうでないかもしれないし・・・、なるほど。
事務所には羽柴さんのご趣味であるアンティーク家具の模型のコレクションとJリーグ発足前の三浦知良選手のサインが飾られていました。当時中学生だった羽柴さんが、バスの窓から手を振ってくれた三浦選手に手を伸ばしてサインをお願いし、書いてもらった色紙とのこと。「三浦選手は他の人の手が伸びても絶対に渡さず、小さな私に色紙が届くまで、しっかりと差し伸べてくれました。素敵な方だと思ました。もう30年以上前になりますが、とても大切にしています。」
羽柴さんの人柄にも触れることができ、とても楽しいインタビューとなりました。
羽柴さんありがとうございました。(廣瀬)