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建築は一生勉強!永く愛される家をつくる建築家 中倉康介さん

 東京大学をご卒業後、同大学院では、新国立競技場を設計したことで有名な建築家・隈研吾氏の研究室に所属され、ドイツミュンヘンへの留学など素晴らしい経歴の数々。
 コンクリート打ち放しの事務所は、ウォールナット一枚板の大きなテーブルと黒色で統一された種々の椅子でコーディネート。花器や照明もお気に入りのものがセレクトされている、とても素敵な空間で取材を開始。

建築家を目指したきっかけ
 中学生の時、機械製図の授業で組立式の椅子をつくることに熱中していたことを記憶しています。元々モノづくりが好きで、眼鏡や車、家具など、人に使われて残っていくものをデザインできる仕事に憧れを抱いていました。
 東京大学に進学し、1・2年目は教養課程のカリキュラムに沿って、様々な分野について幅広く学びました。3年目からの専攻分野を選ぶ際に、最も魅力的に感じた授業が設計製図でした。

 建築学科に進学してからは、図面を引き、模型を作り、著名な建築家の先生方からフィードバックをもらって案を練り直す、という毎日を送りました。建築雑誌や世界の有名な建築物を見てますます建築が好きになり、自身でも建築家が天職だと強く感じるようになりました。
 東京大学大学院卒業後は、東京丸の内エリアのビルなどを手掛ける株式会社三菱地所設計に入社。4年程勤めましたが、エンドユーザーのお客様から直接感想や意見を聞きながら設計をしたいと思うようになり、著名人の住宅や別荘等の実績が多い、株式会社NAP建築設計事務所に転職。様々な経験を積んでいくうちに、思い描くものを更に自由に設計したいという気持ちが募り、独立しました。現在は、東京大学生産技術研究所の特任研究員として論文の執筆等も並行して行いながら、自身の事務所を経営しています。

住宅設計の拘り
 建築設計では、お客様のご要望を反映し、厳しい敷地条件や法律、予算等とのバランスを取りながら、最適なプランを見つけていきます。その感覚は、中高時代に囲碁部に所属していた経験が活きているのかもしれません。序盤の布石では、お互いが自分の陣地を広げ、相手のそれを狭めようと構想してせめぎ合って、毎回違う形が生み出されるのですが、その感覚がどこか似ている気がします。
 設計の依頼は、知人伝いやホームページ経由が主で、お客様は50~70代の方が多いです。一般の方が図面から3次元の空間を想像するのはなかなか難しいので、必ずCGを作成しています。安心して一緒に設計を進められるように、設計段階のイメージと完成形との乖離がほとんどないようにすることを心がけています。
 設計のコンセプトとして、Style with Crafts(スタイル ウィズ クラフツ)を掲げています。時代に左右されない本質的な価値を見出せる設計をしていかなければならないと考えています。そのためには、自然素材の持つ美しさを最大限に引き出すためのクラフトマンシップを尊重する姿勢が必要です。
 人の根っ子にある感性や感情を刺激し、永く愛される建築を実現するために、丹念にヒアリングを行います。潜在的なご要望まで深く探りながら、納得していただけるまで何度でもご提案します。

お仕事のやりがい
 一生、勉強し続けなければならない難しさを感じる反面、それが面白くもあります。常に生まれている新しい技術をキャッチアップしながら、毎日何冊もの図面集や写真集を広げてディテールをスケッチ。同時に、お客様とお打ち合わせを進め、設計案をまとめていくので、1つとして同じ作業の繰り返しはありません。膨大な時間を掛けた分、お客様に喜んでいただけると嬉しいですし、竣工引き渡しの際は、我が子を送り出すような気持ちになります。

今後について
 建築は建てるときや壊すときに、二酸化炭素の排出量が多く、そのサイクルが短いことが問題視されています。その課題解決に貢献するためには、良いものを長く使うことが重要です。例えば、焼杉板は表面を焼いて酸化させると、耐候性や耐久性が増し色褪せもしにくくなります。先日、それと同じように丸太の表面を炙って、柱や梁、桁に利用することにチャレンジした住宅が完成しました。表面を焼いて、ブラッシングして炭を落とし、水洗いした後にクリア塗装を掛けるという手間がかかりましたが、本当の意味でのサステナブルな家づくりを実践できたと考えています。  今後も建築に対する想いの強いお客様とコラボレーションしながら、時間を掛けたからこそできる唯一無二の住宅を手掛けられたら嬉しいです。

編集後記
 中倉さんの設計された建物がどれも夢があり、ワクワクします。東京大学ご卒業の通り、昔から勉強することが身についていらっしゃって、365日建築のことを考えているからこそ、永く住み続けたいと思う家が実現!
 実際に撮影された写真と打合せ時のCG画像を比較しましたが、どちらか分からない程の再現性!1枚1枚ご自身で制作されるそうで、全てはお客様のためにという想いで最善を尽くされています。トータルコーディネートを提案したお客様の中には、鍵を入れる容器まで中倉さんにお願いしたいという依頼もあったそうですよ。
 中倉さん、ありがとうございました。(廣瀬)

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