建築家になったきっかけ
高校生のときは音楽家に憧れ、ピアノ、ギター、エレキギター、エレキベースに挑戦。ポップスやジャズなどの音楽を日々聞いていました。建築家になろうとは考えてもいませんでした。大学入って、本格的に音楽に向き合おうと、アルバイトをしてウッドベースを購入し、ゼロから学んで1日8時間~10時間毎日練習していました。生活のほとんどの時間が音楽だったのですが、段々苦しくなってきて、もしかしたら自分には合わないのではないかと感じるようになりました。
そんな私を見ていた家族は優しく見守ってくれましたが、私自身はこのままではおかしくなると思い、音楽から一歩離れることを決意しました。これからどうしようかと考えていたときに、工学部に通っていたため、その中から唯一芸術に近かった建築を選択。音楽も建築も優れたものを追求する点で共通していると感じました。東京大学建築学科を卒業し、東京大学院建築学専攻修士課程を修了しました。
設計で心がけていること
「人間の内面と呼応する建築空間」をテーマに設計しています。内面とは心のことですが、心と建築空間は密接に関係しています。建築に住み、使う人たちの心が豊かに育まれるような建築を提案していきたいと考えています。中学生の頃、子どもの教育環境によって、学習意欲や学習能力が変わってくるという言葉を新鮮に感じましたが、それは、人間の心は気付かないうちに周りから影響を受けることを意味していると思います。建築空間は人にとってその「影響」となりうるものであるからこそ、意識を持って取り組んでいます。
設計をするときは、どうして家を建てるのか、どんな部屋が必要か、どんな生活をしているのかと細かいところまでお尋ねします。また、お客様が気付いていない部分を専門家として提案し、心に響く設計を心がけています。
「まついハウス」は絵本作家のお母様が亡くなった後の建て替えで、塀画家とパントマイミストの姉妹のための建物です。家族の生き方を包み込むような建築をテーマに、パントマイムができる吹き抜けの空間や壁画家がデザインしたステンドグラス、絵本の展示スペースなどを組み込み、ライブラリー、美術館、シアターを持った住宅となりました。また、壁は日本の伝統色を使い、パントマイム練習用に多くの鏡を各所に設置。実際にお住まいになる妹さんは、日々の生活の中で、発見や驚きがあり、生きる喜びを実感しているとおっしゃっていただきました。
仕事のやりがい
家づくりの全てが初めてのお客様へ本当に必要なものを拾い出して、問題があれば問題点を見つけ出し、その過程をお客様と共有しながら、最終的に喜んで、満足していただけることが一番の喜びです。線の一本一本はその位置で良いのかと考えながら積上げて、設計図面を完成させていきます。現場に入って、さらに磨きをかけて、めざす建築が実現したときの歓びはとても大きいです。いい仕事と出会えたと思います。
編集後記
家を建てる時、多くの方がたくさんの夢や希望を持っていて、全部を伝えきれているか不安になることがあると思います。そんな時は西島さんにお話しをすれば、きっと解決!誰もが気付かない部分まで考察して、気づかせてくれる建築家です。建築のことに限らず、物事を心理的に論理的に考えていらっしゃり、考え抜く力はピカイチです。取材中の西島さんのお話は考えて!考えて!考えて!その答えに辿り着いているのだろうと感じました。終始笑顔で取材をしていただき、言葉や表情から建築好きが滲み出ていました。 西島さん、ありがとうございました。(廣瀬)