高崎駅より車で45分、藤岡市の緑豊かな自然の中、ご自宅兼事務所の建物は瓦の切妻屋根の素敵な大きな邸宅です。建築業の中で様々な分野でのご経験をされた青木さんの住まいづくりについて、お伺いします。
建築家を目指したきっかけ
モノづくりは好きで、大学では建築都市デザインを専攻。色々なことを学んでいる中で、美術館等の大きな建物よりは住宅設計に興味を持ち、卒業後はハウスメーカーへ就職しました。工法開発や設計業務に従事しましたが、自社の限られたシステムの中で設計するだけでなく、それ以外の建築も広く知りたいと思い、地方公共団体外郭団体へ転職。都市・街づくりや高齢者施設の監理等、幅広く担当。その後、アトリエ系の設計事務所に再度転職。一通り、建築設計を学んだ後、独立をしました。
設計への拘り
お客様にとって住みやすく豊かな時間を過ごせる空間、長い目で見て経済的で合理的なデザインを大切にしています。お客様へプランをご提案する際には模型を使うことが多いです。その後プランの変更があるごとに模型も変更していきます。
独立後の最初の作品では、お客様より様々なご要望をお伺いしましたが、予算も厳しく、それらのご要望を整理するところから設計が始まりました。検討を重ねるごとに余分なものが削ぎ落されていき、最終的にはとてもシンプルで洗練された空間をもつ家になりました。中でも気に入ってもらえたのが外と中の中間的なスペース。余白の空間をつくることで様々な行為が生まれればと思って私が提案したアイディアです。実際にお住まいになられてからは、そこにプールを置いて水遊びをしたり、食事をしたりと、様々な用途で楽しんでいますとのことでした。
お客様との関係性
この辺りのいわゆる「地方」では、住まいづくりにおける状況が都市部とは大分異なります。都市部では密集・狭小地で法規制や周辺環境からの様々な制約を受ける中で工夫して設計するケースが多いですが、地方ではゆったりした敷地が多くそれらの規制もそこまで厳しいものにはなりません。この「規制が少ない」という本来望ましいはずの要素が逆に「画一的な建物が量産される」という地方の現状を生んでいると私は思いますし、そのような状況の中で住まいを求めるお客様にとっては選択肢が限られてしまっているのではないかと感じています。私が地元群馬で設計の仕事をやろうと決めた理由は、これまでの私の多様な分野での経験を生かせばそのようなお客様にとっての新たな選択肢の一つになれるのではないかと思ったからです。
編集後記
契約をしていない段階での、最初のプラン一式を拝見させて頂きましたが、模型も含めて完成したものをプレゼン頂いているかのようでした。お客様に対して私の経験と知識からご提案できることは最初から全力でやらせて頂きますと青木さんはお話くださいました。地方と都市部の設計の違いを「制約」というキーワードでお話くださいましたが、色々ご経験されている青木さんなら、地方に建築家と建てる家の新しい風を吹かしてくださるように感じました。青木さん、ありがとうございました。(廣瀬)