取材前にホームページを拝見すると北欧への渡航歴。事務所には北欧家具のような、シンプルでナチュラルな木製の椅子やテーブル、があります。こちらは松下さんが制作されたものだそうです。
建築家になったきっかけ
曾祖父が建てた民家で暮らしていて、幼い頃から、建物を見ることが好きで、出身地である和歌山県の工業高校工学部建築学科に通っていました。卒業後はすぐに就職しようと思っていましたが、建築の面白さを感じ、大学へ進学。恩師の影響で北欧建築を勉強していたため、卒業後は作品集を持って、ノルウェーの設計事務所を転々としました。帰国後は岐阜県のオークビレッジ木造建築研究所にて6年間、現場監督として勤務。その後、栃木県U建築工房の社長とのご縁で、大工として働くことに。自分で設計した家具づくりをすることが楽しく、並行して一級建築士の資格を取るための勉強をしていました。茨城の職業訓練校でCADの講習を受けていた長塚設計事務所で、働いてみないかと声を掛けていただき、官公庁の設計に6年従事し、独立しました。
住宅設計の拘り
お客様とは真っ向に向き合い、疑問に感じていることや、不安に思っていることを1つずつ解決するようにしています。プレッシャーを感じ、大変なことを乗り越えながら、密にコミュニケーションを取り、建物が建って、喜んでいただけるととても嬉しいです。
住宅に限らず建物はその土地の景観の一部となるため、そこにそっと佇み、馴染むように、屋根の方や素材、形などあらゆることを考えて、設計します。
Gables Houseでは、群馬県高崎市の北側に高崎市街はもとより赤城山まで望める斜地に建つ住宅。都内から移住されるご夫妻のために平屋で計画しましたが、勾配がきつい場所で30度近くの傾斜だったため、玄関からのアプローチを容易にでき、かつ緑の景観を損なわれないようにと設計しました。道路側からはプライベートなバルコニーを塞ぐせり出した外観。玄関側からは切妻屋根の落ち着いた立面が特徴です。
住宅医での学び
設計事務所に勤めながら、住宅医スクールに通っていました。住宅医とは住宅に関するお悩みの相談窓口となる人で、構造や白アリの被害、マンションリノベーション、古民家再生など、様々な分野のプロの講義を受けることができ、1年程、リノベーションの講座に通っていました。現在、友人の依頼で板橋区のフルリノベーション案件があり、その時学んだことが非常に役に立っています。
今後について
予算が許す限り、パッシブソーラーなどを導入し、太陽エネルギーを利用した建物も挑戦して、環境に貢献していきたいです。
編集後記
現場監督と大工をそれぞれ6年。住宅医やOMソーラーの勉強会や講習など、積極的に参加されていているお話もお伺いし、設計への思い、松下さんの器用さ、チャレンジ精神がバイタリティーの根底にありました。
ホームページの日記に街を散策し、古き良き建物を見ていらっしゃる記事を多数拝見しました。現在、大正ロマンをテーマとしたリノベーションをされているそうですが、古民家や寺院などの古建築を手掛けられる日を楽しみにしています!
松下さん、ありがとうございました。(廣瀬)