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居心地がよく、飽きのこない空間づくりを提案する建築家 西山 涼二さん

建築家を目指したきっかけ
 子供のころにテレビでやっていた「劇的ビフォーアフター」の影響が大きいです。自分の家を、秘密基地みたいに自由にできることに魅力を感じていたのだと思います。大学では、コンセプトやパースペクティブ重視のマッシブな建築を考えることがほとんどで、面白いけど、なんか違うなぁと4年間感じ続けていました。新卒の就職では、現場を見ておきたいという気持ちもあり、ゼネコンの現場監督へ。ここでも違和感を感じながら2年を過ごし、世界一周の夢を実現するために退職。直後に一級建築士の資格を取得したものの、建築を続けるかは悩んでいました。図らずも自分探しの旅になった世界一周の途中、たまたま立ち寄ったのは、ヴィトラデザインミュージアム。ここでヘルツォーク&ド・ムーロン設計のヴィトラハウスの空間を体験したことが、「こんな建築ならやりたい!」と、設計に戻る決め手になったのでした。

住宅設計の拘りや心がけていること
 毎日の生活の場である住宅は、機能性の優先度が高くなります。住まい手の要望のクリアは前提条件として、その上で成立するデザインを考えます。要望から生まれるアイディアもあるので、それらを丁寧に汲み取りつつ、だからと言って御用聞きにならず、プロならではの視点も交えて設計していきます。また、言葉巧みにコンセプトを語るよりも、家族それぞれの”居場所”のつくり方や、素材・色味のバランスに細心の注意を払い、居心地が良く、飽きのこない空間づくりを目指しています。

お客様との関係性
 仕様が決まっていない自由な設計においては、住まい手側も検討しなければならない項目がとても多いです。建築家任せでなく、一緒にプロジェクトを進める共同体であるという認識を持ってくださいとお伝えしています。 やり取りは、LINEでフランクかつ密に行うことが多く、引き渡し後もたまに顔を出させてもらうなどしています。設計者は、生活に関わるあらゆることを共有してもらう必要があるので、良き友人であり相談相手でもありたいと考えています。

お仕事のやりがい
 私が大学やゼネコン時代に感じていた違和感の正体は、「大きな建築物の無味無臭感」でした。つまり、私はそこで生活する人たちの人間臭さを含めた空間や、秘密基地感のある空間に惹かれるようです。住宅をはじめとする小さな建築では、人と人のコミュニケーションや営みの結果として「その人たちだからこその空間」が立ち現れてくるところに、面白さとやりがいを感じています。

今まで設計された事例について
 独立以降、これまで手掛けてきたほとんどが住宅や小規模店舗です。お客様はそれぞれにこだわりを持っていますが、具体的にどうすればよいのかわからないという状態から相談いただき、一緒につくり上げていく過程も含めて楽しんでくださっています。逆に私は「お任せ」されると、何を手掛かりに設計したものか悩んでしまいます。時間はかかりますが、ひとつひとつ積み上げて一緒につくっていくスタンスはこれからも変わらないと思いますし、それを望む方と空間づくりをしていけたらと考えています。

編集後記
 建築を学び、実際の現場経験を経て、現在の建築家スタイルを確立していったお話が印象的でした。秘密基地のような自由な空間を作りたい、というお言葉から、創造するワクワク感と建築が好きなお気持ちが伝わってきました。お客様は家づくりをする上での運命共同体だと仰っていて、お客様の生活に密接に介入する責任感を感じました。
西山さん、ありがとうございました。(飛髙)

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