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住まう人の感覚や感情に寄り添い、それぞれの心地よさを提案する建築家 狩野 一貴さん

建築家を目指したきっかけ
 小学生の頃、家族旅行に連れて行ってもらうことが大好きでした。その影響もあってか、訪れる場所ごとに異なる特色をもった自然環境・文化・人の暮らしに興味をもつようになり、次第にそれらと密接に関わる建築を学びたいと思うようになったことを記憶しています。

住宅設計の拘りや心がけていること
 学生時代は、建築学の中でも建築音響や環境心理を専攻していましたが、当時から身の周りの環境や居心地にまつわる人間心理を中心に据えた建築の在り方にとても関心がありました。  
 家について考えると、”心地良い住まい”や”豊かな暮らし”というものは、「間取りをこうすれば実現できます!」というような単純なものではないと私は考えています。当然のことながら、空間について心地良いと思う感覚は人それぞれ大きく異なります。さらには、人は空間の中を動き、視点を変えながら日常の中で様々なシーンに出会い、時の流れの中で感覚や感情は振れ幅をもって大きく変動します。このことから、機能性・利便性のみならず、その他多くの心理的要素が複合的に関係し合いながら、その合流地点で初めて”心地良い”が生まれるのかなと思っています。その時々の感覚や感情に寄り添うさまざまな居場所を生活空間に重層的に織り成すイメージを設計では常に心がけています。

お施主様との関係性
 住宅は完成時がゴールではありません。住まい手は新たな生活のスタートラインに立ち、これからの長い時間を家族や地域と共に歩み続けていくことになります。クライアントの皆様とは、計画の中で大切にしていきたいことを共有し、必要なもの不要なものを見極めながら日々の暮らしを豊かにする建築を一緒に考えていけると嬉しく思います。

仕事のやりがい
 一つとして同じ敷地は存在しないので、絶えず新しい建築に挑戦できることがやりがいです。また、光・風・匂い・温度・音の響き・空間の繋がり・気配など目には見えない要素も含めてデザインし、住まい手に長きに渡って愉しく住んで頂けることが一番の喜びです。

今後の目標
 建築はまず、完成時の一瞬のためのものではなく、それからの長い時間ずっとそこに在り続けるものです。物理的な環境を「つくる」だけではなく、住まい手や使い手が環境を「育む」ことができるよう長い時間を内包した建築をクライアントの皆様と一緒に実現していきたいです。

編集後記
 幼少期のご経験から、五感で「心地よさ」を感じるアンテナを養われてきたのだと思いました。また、学生時代には環境や居心地にまつわる人間心理を深く学ばれ、現在の建築家スタイルが確立されたのだと思いました。物理的な間取りや機能性を整えて終わりではなく、長く住まれるお客様が環境に合わせて心地よさをアップデートしていけるような建築を一緒に実現していきたいというお言葉が胸に響きました。
 狩野さん、ありがとうございました。(飛髙)

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