作品詳細
計画地は、今まで一度も建築行為のなされることがなかった区画。そこは鬱蒼とした樹木に覆われた傾斜地であった。何度か敷地を訪れるうちに気付き、伐採せずに共存する方法を模索し始めた。地区特定で決められている壁面後退などから逆算すると、その樹木は建築可能エリアの中央付近に位置していた。そのため、樹木に対して少し遠慮しながら、建築で取り囲むようにプランニングを進めていった。
一本の樹木を中心点として、求心的に考えているが、ここではあえて角度を揃えてシンメトリカルにしようとはしていない。それぞれの場に必要な空間ボリュームとなるように角度をフリーにして、その結果をコントロールしていく手段をとっている。幾何学的な「だが」を少し外してしまうことによって得た自由度を、モーダルに(JAZZの用語で、キー(調)ではなくコードで曲を構成していく手法)展開しているのだ。
基礎から2段床スラブまでのRCに、木造の架構を載せるにあたって、その平面形を引き継ぎながら、三角形構面の頂点をパラメトリックに操作、屋根形状を連続的に変化させている。
中央近くがピークとなっており、絞り込んだ両端部分は、中2階や吹き抜けを介して1階の領域と連続的に繋がっていく。環境に対しての親和性を持つこと、連続的なシーンを繋げること。それらは常に内部空間を変奏していく行為として計画された。
所在地 :静岡県伊豆市
主要用途:週末住宅(別荘)
主要構造:混構造(1F:RC、2F:木造)
規模 :地上2階
敷地面積:1124.35㎡(340.11坪)
建築面積:122.29㎡(36.99坪)
延床面積:195.37㎡(58.98坪)
竣工 :2019年4月
構造設計:RC部分/TS構造設計、木造部分/株式会社シェルター
施工 :大同工業株式会社
撮影:鳥村鋼一
廣部 剛司
株式会社 廣部剛司建築研究所
神奈川県
HP:http://hirobe.moon.bindcloud.jp/index.html
自然の美しさに目を向けていると、様々な瞬間に地球は応えてくれる。豊かな自然のある場所に旅をすると気付きやすいけれども、日常の中にあるそれは意識していないと日々の生活に埋もれてしまう。だからなじみの街をいつものように歩いているときにそれを感じようとするためには、少しだけ感覚を研ぎ澄ます必要がある。私は「音楽のように」建築に地球のインフォメーションを刷り込んでいくことで、そこで暮らす人に<自然に>地球へ向き合う視線を獲得して欲しいと思っている。その手助けがきっと建築にできると信じているのだ。
家の中に居ながらにして光の動きを感じ、雨の日は雨の落ちるのを楽しむ。そうして徐々に自分自身の存在が「地球の一部分」なのだと感じられるようになって来る。それは春がまた必ずやってくる、ということの確かさのようにその場所に「住まう」ということを肯定してくれるのではないかと考えている。
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