作品詳細
大手ハウスメーカーの中古住宅をリノベーションした事務所兼自邸である。
空家問題や過剰住宅供給といった社会問題への関心、資産価値(減価償却資産の耐用年数と材寿命とのギャップ、土地のみが資産となる経済構造)、初期費用を抑えるという総合的な判断から、中古住宅のリノベーションを選択した。
設計施工元のハウスメーカーの耐震診断により、現在の耐震基準を満たし、且つ躯体は健全である事が分かった。
その為申請機関に相談し、申請を要さない工事内容とした。
内部は構造上主要な部分を残し刷新している。
プレハブ特有の細い構造材を露出してインテリアに取入れ、2F 床を一部グレーチングにして二層に分断されていた空間に広がりと変化を与えた。
外部は既存を利用・補修し、過半でないS 造部外壁の2 面のみを新装し、風景を取込む為に開口部を移動した。
外装全てをシルバーで抽象化する事で、プレハブ創成期の姿と新旧混在した意匠となった。
この事例は、内外共に時代に合わなくなった大量生産住宅の建築的価値の向上のみならず、健全な既存部を利用し社会・経済・資産面においても総合的に価値化する実験住宅になったと考えている。
物件取得の2014 年末から8 年近く経った現在、空き家活用や中古物件の購入は新築と並ぶ選択肢のひとつとなり、既存住宅状況調査など法も整備され、一般にも周知された。
メリットデメリットを知った上で、『今あるものを活用する』という最も現代に必要とされている資源の再利用・再価値化という観点を、衣食住のうちの「住まい」にも取り入れて頂きたいと思う。
家族構成 :夫妻+子供2 人
ロケーション :高台、住宅地
構造規模 :RC+軽量鉄骨造 3F
延床面積 :122.74 ㎡(37.1 坪)
B 階 :16.00 ㎡(4.8 坪)
1階・2階 :53.37 ㎡(16.1 坪)
部屋数 :4 +α
竣工 :1979 年
リノベーション:2016 年
設計・監理 :浦木建築設計事務所
施工 :大作
写真 :浦木建築設計事務所
受賞 :第33 回リフォームコンクール 住宅リフォーム推進協議会会⾧賞(生田の家)
第7 回サステナブル住宅賞 奨励賞受賞(生田の家)
HEAD 研究会xLIMIA リノベコンペティション2017
プロリノベ部門 グランプリ受賞(生田の家)
浦木 美樹子
浦木建築設計事務所 / URAKI ARCHITECTS&ASOCIATES
神奈川県
HP:https://urarchi.com/urarchi2021
移り変わっていく時間や人や物をおおらかに受け止め、愛着が増していく住まいづくりを目指しています。
地域や土地の気候風土を丁寧に読み込み、あたらしく美しく、その街の景観を彩る住まいを提案します。
家族の要望や理想はもちろん、経済性・機能性・構造・メンテナンス性といった面からも合理的な設計であるかどうかを常に考え、変わりゆく時代の中で美しさと共に将来にわたって色あせない価値をデザインします。