作品詳細
新潟駅から徒歩15分程の郊外型分譲地の一角に建つ、夫婦+子供2人が暮らす住宅である。
前面道路は分譲地内の計画道路であるため通過交通が無く、子供達の遊ぶ声響く豊かな公園のように使われている。
そんな町並みの中、敷地前面に木組みを現しにした大きな屋根を空高い位置に架けた木造2階建ての住宅を計画した。
「大きな屋根」は道路で遊ぶ子供達にとっては強い日射しや、急な通り雨をしのぐ東屋となり、家の中で寛ぐ家族にとっては強い西日や北西風、そしてプライバシーを調節してくれる優しい傘となる。
また、家の中から見上げる「自分ちの屋根」というものが、18畳のLDKをもっと広く、3畳程の個室をもっと広く、実際の面積を超えてより大きく感じさせてくれている。
一般的には駐車スペースとして完結してしまうことの多い敷地の前面スペースに、「家と町の関係」をより豊かに、「屋内と屋外の関係」をより有機的に繋げるように「大きな屋根」を架けることで、町並みを囲い込むことを試みている。
平面計画はシンプルに、1Fに床座りで過ごすLDKを配置し、2Fに個室群を配置した。
極端に薄く作られた2Fの床、大きな屋根下に続く長い廊下、段差や隅っこといった沢山の拠処をつくる事で、画一的になりがちな家族の距離感を自由に選択出来る余裕を計画している。
冬場の日射を取り込む大きな木製サッシ、1Fの空気を2Fそして天窓までスムーズに届けるスノコ床等、自然エネルギーを有効に活用し、冷暖房はルームエアコンのみに頼る、大きな屋根に包まれたコンパクトなパッシブハウスが目指されている。
竣工 :2015.5
種別 :新築
用途 :住宅
規模 :95.58㎡
構造 :木造
所在 :新潟県新潟市中央区
設計 :東海林健建築設計事務所(担当 間 遼一)
構造設計:田中哲也建築構造計画(担当 田中)
施工 :栗田工務店(担当 長峰)
撮影 :©村井 勇, 東海林 健
東海林 健
株式会社 東海林健 建築設計事務所
新潟県
HP:https://takerushoji.jp/
住宅、商業空間、公共空間と求められる機能が変わっても、その要望を解き答えるだけではなく、その空間に居る事自体が快適であること。
また建物を外から眺める事自体が快適であること。
新しい建物が建つ事で建物の所有者や使用者はもちろん、近隣の人やたまたま通った人にまでも豊かな気分や固有の価値体験を提供できたらと考えています。
結局作るのは何であれ、開かれた環境を目指しているのではないでしょうか。
単にそれは大きく開放されたという意味ではなく、人間と釣合いの取れた、更には生き物として快適な場所や時間ということだと思います。
機能的とか便利とかとはちょっと違う。
すごくそれはボンヤリとしたものではありますが、私達にとってはそのボンヤリが現在のデザインの対象であると考えています。