取材は築35年のリノベーションされた住宅兼事務所で行いました。趣のある黒い外観からは想像できない、広々とした空間。壁は白く塗装されていて、木の机が印象的。照明が更に良い雰囲気をつくり出しています。業務デスクがある場所は、ウォークインクローゼットだったそう。洞窟のような落ち着く場所での設計について取材を開始。
建築家になったきっかけ
建築書籍や建築物を見ることが好きで、大学では土木工学を学び、分譲住宅メーカーの現場監督として勤めていました。現場をいくつも抱える中、知識と経験の浅い私が仕切って、家を建てて良いのだろうかと疑問を感じていました。
そんな頃、設計事務所で働く友人の話しを聞き、設計に興味を持つようになりました。そして、会社を退職し、本格的に建築を学ぶ為、専門学校に入学しました。卒業後は彦根建築設計事務所で6年間勤務し、独立。様々な分野の方との出会いが増え、独立して良かったと思っています。
住宅設計の拘り
設計のご依頼は、友人や前職の彦根所長との共同、こちらの住宅買ったときにお世話になった不動産屋さんなど、様々なご縁でいただきます。
まずは、お客様の要望をヒアリングし、コンセプトを決めます。この工程が最も時間を要します。プランは最も良いと思うもの1つを提案。住宅にオリジナリティを持たせることで、お客様に愛着を持って住んでいただけると考えています。分譲住宅ではなかなか出せない、設計事務所ならではの魅力です。
素材は本物をできるだけ使用。フェイクの木材やクロスではなく、健康で環境にも優しい、自然素材をおすすめしています。デザイン性だけでなく、五感で素材を感じていただきたいです。
日野の家は、近隣の不動産屋からリノベーションのご依頼を頂いた作品。築51年の古い団地で、今までにないデザインをコンセプトに設計。天井に達しない壁をつくり、すべての部屋をひとつながりに、広い空間を演出。これまでの団地にはない、新しい空間をつくることで、住む方が既成概念にとらわれず、自由な暮らしができることを願っています。
お仕事のやりがい
0から住宅が建つまで携わることができ、お客様に喜んでいただけることがやりがいです。現場監督は設計図に沿うことが基本でしたが、建築家は自分で考えて、それを形にしていけることが幸せだと感じています。
現在は1人で運営しているため、今後は誰かと一緒に仕事をして、他の人の視野も吸収しながら、設計の幅を増やしていきたいと思っています。住宅に限らず、シェアオフィスやバケーションハウス、ホテルなど、その時代に合った建物など、これからも挑戦し続けていきたいです。
編集後記
現場監督の経験があるため、設計だけでなく、施工管理を担当されることもあるそうで、設計図に描かれていることを具現化する技術と知識は織田さんならではの強みだと思います。そして、時間をかけるというたコンセプトによって、家族が愛着を持って暮らせる住宅が実現します。素材にも拘り、人や環境にも優しいです。
織田さん、ありがとうございました。(廣瀬)