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界川の家 北海道

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敷地は南側に山を背負い、近くの山の緑とともに札幌の街が一望できる高台の閑静な住宅街。建築主であるお元気な老紳士はこの景色を満喫して過ごしたいとのご希望でこの土地での暮らしを選ばれました。
リビングダイニング等の主な生活空間を、向かいのお宅の屋根越しの2階に持ち上げ、さながら展望台ですが、建物の高さはそれなりに高くなってしまいます。閑静な住宅街の中、出来るだけ威圧感を与えないよう、屋根の傾斜を道路側に降ろし、2階を軽やかに跳ね出し、外壁はサーモウッドの板張りにして、ボリューム感を抑えます。この屋根の傾斜は、人が大勢あつまるところはのびのび、プライベートルームには落ち着き、と室内空間には抑揚を創り出しています。
建物は鉄筋コンクリート造外断熱、冬は空気熱源ヒートポンプを熱源とした躯体放射暖房、夏は日射遮蔽による躯体蓄冷涼房です。この放射を有効に利用するため、室内の仕上げはコンクリート剥き出しに塗装。剥き出しですが痛くないよう、また包み込まれる安心感をつくりだすため、比較的自由な形状をつくり易いコンクリートの特性を生かし、あちらこちらに丸みをつけています。各室への穴をうがったような曲線の入口は、穴の向こう側への想像力をかき立てます。
またこの建物のつくりは、暑くもなく寒くもない、春、秋のここちよさを室内の温熱環境に実現しています。冬はほのかな暖かさが身体全体をやんわりと包み、しばらく中にいると、暖かさ自体も忘れてしまい、暑さも寒さも感じなくなります。人体の体感温度というのは、室温と内壁や床などの温度を足して2で割ったものに相当すると言われます。気温(室温)は体温調節機能に影響を及ぼしている要素の半分程度だということです。涼房は夏の直射光を遮り、断熱することで建物内に蓄冷をして壁や床の温度を低く保ち涼感をつくります。動くと少し汗ばみ、それをそよ風が乾かして、その気化熱が涼感を与えます。発汗という身体が本来もっている体温調節機能を生かしているのです。
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」、暖房も冷涼感も過ぎないこと。人が心身ともに健康にすごせる環境づくりを目指して。

所在地 :札幌市中央区
構造設計:株式会社JSD
設備設計:照井康穂建築設計事務所
施工  :株式会社藤井工務店
主要用途:専用住宅
敷地面積:396.67㎡
建築面積:156.82㎡
延床面積:225.44㎡
構造  :鉄筋コンクリート造
規模  :地上2階
空調① :低温温水式床放射暖房 (熱源:空気熱源HP)
空調② :蓄冷床放射涼房+汎用エアコン(除湿利用)
竣工  :2012年7月
写真  :酒井 広司

照井 康穂

株式会社照井康穂建築設計事務所
北海道
HP:https://www.teru-arch.com/

建築に向き合うとき、いつも思うことがあります。
人々はそこで何を感じ、どう活動し、どんな夢を描くのか。
住宅であれ、学校や商業施設であれ、それは同じです。
建築の存在意義は建物の造形のみで語られるのでなく、そこに用意された空間、あるいは環境が使う人にどう作用するかが重要です。
住まいのデザインや動線計画はそのために思考されるのであり、大型施設もしかり。
集う人々の関係性や心の動きまでも想像し、宝物を探りあてるような気持ちで設計にあたっています。
そして、忘れてはならないのが自然とのつながり。
自然界の摂理を応用した建築環境の創造により、身も心も満たされ、日々の営みを謳歌していけること。
笑顔のときも、そうでないときも、ありのままを受けとめる寛容な建築こそ、私たちが希求するものなのです。

 

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