作品詳細
伸びやかな住環境を創出する
丁寧な暮らしを日々重ねてこられた老夫婦の終の住処です。 敷地は、もとより工芸の町として紀州漆器や和傘の伝統産業で知られている和歌山県北部沿岸部に位置し、気候は比較的温暖な瀬戸内気候に属しています。古くからこの地で営まれてきた暮らしを椅子座中心の暮らしに焼き直し、伸びやかで包容力のある空間を求めました。
配置構成は、敷地形状及び接道状況、日射条件を考慮し、母屋を中心に西に車庫、北に主庭、東に菜園、南にサービスヤードを配し、車庫と母屋の間をメインアプローチとして、建物全体を軒先を低く抑えた片流れの大屋根で覆っています。外壁仕上材には、経年におけるメンテナンスの容易さと耐久性をねらい、外壁材の経年による変形の抑制を目的として、この地方で古くから使われる焼き杉羽目板張りを採用しています。室内は、どこにいてもお互いの気配を感じられるよう、ワンルームにアルコーブをつくるような空間構成の中に、北庭からの反射光が室内にやわらかな陰影をつくり、空間に落ち着きを与え、南からの直射光がこれにアクセントを加え、屋内外を一体とする伸びやかで包容力のある住環境を創出しています。
所在地 :和歌山県海南市
構造設計:株式会社照井康穂建築設計事務所
設備設計:株式会社照井康穂建築設計事務所
施工 :前窪工務店
主要用途:専用住宅
敷地面積:511.82㎡
建築面積:203.49㎡
延床面積:160.41㎡
構造 :木造
規模 :平屋
空調① :低温温水式床放射暖房(熱源:空気熱源HP)
空調② :蓄冷床放射涼房+汎用エアコン(除湿利用)
竣工 :2012年10月
写真 :井上 登
照井 康穂
株式会社照井康穂建築設計事務所
北海道
HP:https://www.teru-arch.com/
建築に向き合うとき、いつも思うことがあります。
人々はそこで何を感じ、どう活動し、どんな夢を描くのか。
住宅であれ、学校や商業施設であれ、それは同じです。
建築の存在意義は建物の造形のみで語られるのでなく、そこに用意された空間、あるいは環境が使う人にどう作用するかが重要です。
住まいのデザインや動線計画はそのために思考されるのであり、大型施設もしかり。
集う人々の関係性や心の動きまでも想像し、宝物を探りあてるような気持ちで設計にあたっています。
そして、忘れてはならないのが自然とのつながり。
自然界の摂理を応用した建築環境の創造により、身も心も満たされ、日々の営みを謳歌していけること。
笑顔のときも、そうでないときも、ありのままを受けとめる寛容な建築こそ、私たちが希求するものなのです。
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