作品詳細
敷地は2012年から区画分譲が開始された、開発規模52,321坪、総区画数540区画の大規模な高密住宅開発地域「陽街」内。
宅地内の緑被率や隣家からの離隔距離が独自に定められ、開発地域内には豊かな緑地公園が多数計画され、良好な住環境が整備されている。
その一角に夫婦と子供二人、4人家族が暮らす住宅を計画した。
設計に際し、求められたことは
・ 庭を計画し開放的な生活をしたい
・ 沢山の書籍が納まる本棚が欲しい
・ キッチンは個室にしたい
というシンプルながらも明快な3点。
1Fは玄関土間を中心に配置し、その傍らに子供室を配置。子供達が室に留まらず、土間から外まで敷居無く一体的に使い切れるように計画している。
2Fは片廊下形式とし、そこからゆるやかに区切られたリビング、ダイニング、キッチン、トイレにアプローチする。LDKを大きなワンルームとはせずに小さく分割し、それらを片廊下で結び、その廊下に全長12mを超すワークカウンターと本棚を設置することで「LとDとKの間」を、夫婦ともに大好きな「沢山の書籍」で充填している。
2階に配置されたLとDとKの外部には2Fまで届く背の高い樹木が沢山植えられ「廻庭」を形成している。「廻庭」に面して大きな窓を開ける事で、豊かに生い茂る木々に包まれた、木々に触れられる開放的な生活を可能にしている。
更に、その「廻庭」を包むように架けられた大きな帽子で作られる「屋外のような室内のような曖昧な領域/バッファスペース」が、雪や雨、夏の日射や冬の北西風、そしてプライバシーを調節し家を守ってくれることで、高密な住宅地の中で、四季に包まれた豊かな生活が実現出来ている。
分割されたLとDとKとその間。
家の中に取り込まれた四季と時間の移ろい。
廊下に設置された12mのワークカウンターと沢山の書籍。
家に大きな帽子を架けることにより生まれる「陽の光や雨を感じられる、屋外のような室内、室内のような屋外」といった領域の曖昧性。
そんなたくさんのきっかけに惹かれ、家を歩き、廻る。
散歩の途中にあるリビングやダイニング、カウチや珈琲と読み込まれた文庫本。
そんな「家の在り方」と「人の居方」が “OH! house” では目指されている。
※居方:街角に人が居る情景に代表される,人がある場所に居る様子,その時生じている関係を取り扱う概念として鈴木毅氏(大阪大学)により提案された言葉
竣工 :2013.12
種別 :新築
用途 :住宅
規模 :107.7㎡
構造 :木造
所在 :新潟市中央区
設計 :東海林健建築設計事務所(担当 吉松 宏樹)
構造設計:佐藤 実(M’S構造設計)
照明設計:稲葉 裕(FOR LIGHTS)
施工 :涌井建設(担当 涌井)
撮影 :©佐武 浩一
東海林 健
株式会社 東海林健 建築設計事務所
新潟県
HP:https://takerushoji.jp/
住宅、商業空間、公共空間と求められる機能が変わっても、その要望を解き答えるだけではなく、その空間に居る事自体が快適であること。
また建物を外から眺める事自体が快適であること。
新しい建物が建つ事で建物の所有者や使用者はもちろん、近隣の人やたまたま通った人にまでも豊かな気分や固有の価値体験を提供できたらと考えています。
結局作るのは何であれ、開かれた環境を目指しているのではないでしょうか。
単にそれは大きく開放されたという意味ではなく、人間と釣合いの取れた、更には生き物として快適な場所や時間ということだと思います。
機能的とか便利とかとはちょっと違う。
すごくそれはボンヤリとしたものではありますが、私達にとってはそのボンヤリが現在のデザインの対象であると考えています。