作品詳細
都市の中にある築41年の鉄骨造メゾネット住戸のリノベーションである。1~2Fは貸事務所、3~4Fが対象住戸であり、改修前は3Fを民泊施設として活用していたが、住まい手が変わり、新たに夫婦と子供2人の家族向けのプランへと改修した。3Fは壁を取り払い、鉄骨造の特徴を生かした開放的なリビングアクセス形式のプランとした。玄関の仕切りがない代わりにハイカウンターを置き、キッチンとの間の緩衝スペースとした。日本でよく見かける住宅プランでは玄関廊下と居室が区画され、家に帰って来ても家族が顔を合わせずに寝室に直行できるプランになっていることが多い。それに対して今回の計画は玄関廊下のないプランのため、家族や来客は必ず3Fの大部屋を通ることになり、お互いの顔が良く見える風通しの良い平面計画となっている。
3Fの大部屋はこの家を訪れる全ての人の目に付くパブリックな場所であるため、収納を充実させてモノを片付けられるとともに、家族の個性が見えるようにモノを飾ることができる、ギャラリーのような空間が良いのではないかと考えた。例えば鉄骨造の倉庫を白く仕上げてギャラリーにコンバージョンするようなイメージで、白地をつくり、オブジェを置くように黒い什器を配置していく。黒い什器は収納であるが、展示台でもあり、季節や時代に応じて好きなモノを飾ることができる。
ギャラリー空間にはソファは置かず、黒い畳スペースを計画した。畳スペースはソファ代わりの腰掛けとなり、デイベッドとなり、来客の宿泊場所にもなり、様々な使い方が可能である。黒い什器は製作家具としたが、それに合わせてキッチンや洗面台も黒色の既製品を選定した。モノクロの空間は、食器やフロアランプ、グリーンやファブリックなど、置かれるモノを美しく引き立てる良い背景となる。
大部屋の3Fに対して4Fは寝室フロアである。4Fのホールは通り抜けるだけの廊下よりも広めに計画し、セミパブリックな家族の居場所を作ることで、ここでも家族が顔を合わせて会話が生まれることを意図している。実際、子供がゲームをするスペースとして活用され、子供が個室にこもりっきりにならない計画となっている。なお、3、4Fともに東側の掃き出し窓を交換し、改修前に欄間と横桟付きのシングルガラスであったサッシをフルハイトのペアガラスに変更し、デザインと断熱性能を改善した。
所在地 : 東京都台東区
用途 : 住宅(リノベーション)
竣工 : 2022年10月
構造 : 鉄骨造
階数 : 地上3~4階
撮影 : Forward Stroke Inc.
延床面積:108.64㎡(32.86坪)
部屋数:4部屋(3BR+LDK)
家族構成:夫婦、子供2人
ロケーション:市街地、住宅地、都市
鈴木将記
鈴木将記建築設計事務所
HP:https://www.suzukiarc.com/
東京都港区を拠点とした若手建築家による建築設計事務所です。建築家ならではのアイデアでクライアントの期待を上回る提案をいたします。住宅、店舗、オフィス、クリニック、ホテルなど、様々な用途の建築の新築やリノベーション、インテリアデザインに対応可能です。
<設計理念>
『建築設計を通して人と環境に優しい未来を創造する』
建築の規模や用途に関わらず、普遍的な心地よさと環境への配慮を追求し、自然と人が集まる場所を目指した設計を行います。