作品詳細
「家は、家族の“ふるさと”であると思っています」
これから“家族”となっていくご夫婦のそんな想いをうかがって家づくりは始まりました。若いご夫婦が“ふるさと”となる家をつくるため、祖父母の土地と家を引き継いで建て替えた住まいです。
築60年程の旧居を切り離し、納屋部分を残して手を加え,中庭を介して母屋(新居)を配置。アプローチから始まり納屋から母屋へ、玄関から内部へ奥に進むにしたがって徐々に心が落ち着けるようなプランとなっています。
雁行する軒とぬれ縁は、内と外との境界をやわらかく繋ぐとともに、そうした心の移り変わりも表しているともいえます。
新たな空間のなかに、古材の存在をさりげなく感じさせています。玄関の欄間をはじめ和室の竿縁や仏壇置き場、床の間は旧居のものを再利用して組み直し、夏の建具となる簀戸は、高さを変え4枚引き込み戸として生まれ変わりました。家族を見つめるロフトの梁も、何十年と旧居の屋根を支えていた小屋梁です。
また庭においても受け継ぐなかで、 家のプランニングに呼応するよう再構築しました。既存の石灯籠・庭石(巨石)はすべて再利用することにし、役割を持たせて新たな庭にひとつひとつ組み直しました。
樹木は実のなる木や思い入れのある木を残したり移植し直したり、庭のストーリーにふさわしい樹木や緑を新しく仲間に加え、育てる楽しみもやさしく組み込みました。
こうして出来た性格の違う6つの庭は、家の中から眺める風景を豊かにし、近隣の人や通りを歩く人との交流を自然にしてくれます。
そして、その庭にそっと佇む新旧の建物は、過去と未来の歴史をつなぐ確かな礎(いしずえ)となっていると感じています。
「ご先祖様も一緒にいる家」となるような住まい。これから生まれてくる子どもたちはここで心と身体を育てていきます。
「ひとつの家族として、家があるといい」と願って生まれた家が、“家族のふるさと”となることをいま、確信しています。
山道勉
山道勉建築
大分県
https://teamyamatani.com
人も家も“そのものらしく”いられるようにと、家族・自然・歴史・時間・地域、それぞれの繋がりを編み込むようにして、家と庭を同時に設計しています。