作品詳細
坂道を登っていくと、四角い建物に四角い穴が空いている建物が現れる。建築主の希望は、敷地を生かして南西の方角の山が広がる景色を見たい、卓球ができるスペースがほしいということであった。建物を通して景色の楽しみはより広がる。ひとつだけある四角い穴に切り取られた景色や光が、内部の多様な居場所と響き合う空間を考えた。1階の各部屋には上部から柔らかな光がもたらされる。中庭は、木格子からの木漏れ日が差し込む。
2階の奥側のダイニング・キッチンからは、四角い窓に切り取られた景色が楽しめる。
リビングではゆったりとした雰囲気で、広がりある景色が広がる。
建物前方の2つのエリアはそれぞれ高さが異なり、視点を変えた景色が展開していく。
姫路の家 依頼から完成まで
家造りのスタート時点では、景色を楽しむ住まいではなかったことに気づきました。
最初電話があり、急遽事務所にて会うことになりました。住宅に囲まれた広めの敷地を購入しようか迷っている、という相談。面白い敷地ではあるものの、住まい方や予算を聞いていると、特に外部を使うつもりもないとのことで、外構に関わる予算も掛かりそう。他の候補もあったが、少し土地の造成にかかる予算が超過しそうで、敷地を再考することをおすすめして、その日の相談は終わりました。
その後、何度か連絡があり、エリアを少し広げたり変更したりしながら、幾つも敷地を見に行きました。候補ではないが一応みてもらいたい、という長年売れ残っていた土地を検討すると、意外にも良い敷地で、予算におさまる敷地。買付しようというタイミングで他の方に売れてしまう。その後、予算に合う敷地がありつつも、今ひとつインパクトに欠けるなか、出てきたのが今回の敷地。平坦でありながら眺望も望める。古家に入って2階から見える眺望は、木がありしっかり見えないがおそらくいい予感。地盤がわからず予算がタイトだったが、建築主の思いが勝り購入することに。検討には時間を要した。景色を望むだけでなく、外観のインパクトも必要。事務所で打合せしたり、ときには姫路で打ち合わせしたり。姫路はゆったりとした個人の喫茶店が多く、姫路の喫茶店をめぐりながら、何度か打合せしたのが思い出されます。
用途:専用住宅
家族構成:夫婦
場所:兵庫県姫路市
敷地面積:230.52m²(69.73坪)
建築面積:54.94m²(16.62坪)
延床面積:97.64m²(29.54坪)
構造:木造
階数:地上2階
竣工年:2020年
写真撮影:平桂弥(studioREM)
藤原 慎太郎 / 室 喜夫
藤原・室建築設計事務所
大阪府
https://aplan.jp/
建築は空間を、空間は景色を。
景色は体験と記憶を。建築に完成はあっても、空間に完成はありません。
空間が見せる景色は、人、時間、自然によって移ろい、決して完成することはないのに、一瞬一瞬の体験と記憶のなかで完成しています。