作品詳細
この二世帯住宅は、敷地の南側と東側をお茶の水女子大学に隣接している。 長く続く私道を登り切り、緩やかに勾配のついたアプローチを経て、エントランスへと至る。 1階は事務所、2階3階は各世帯の住宅となっており、エントランスホールから階段室へと至る扉が、居住エリアと仕事エリアを隔てている。
時と共に風合いが増すような素材感を求めて、粗い触感のせっき質タイルと、木サッシの組み合わせを外装とした。 職人の手作業によってできた、一枚一枚色ムラのあるタイルと、広葉樹の木サッシ枠は、均質な工業製品では決して得られない味わいを持つ。
家族が集う食堂を核とし、その周囲に居間、厨房、座敷といった異なる性質の空間を配置した。 居間を天井の高い開放感のある伸びやかな空間とし、座敷を天井の低い包まれたような空間とした。 そして厨房を、これらの室を見渡すことができる位置に据えた。 こうして有機的につながった一つの室内では、家族各個人がばらばらなことを行なっていても、お互いの気配を感じ取りながら、適度な距離感を保つことができる。
高気密外断熱を採用しつつも、非空調時の南北通風確保を前提に、住戸の間取りや開口位置を検討した。 借景となる大学敷地の緑に加え、開放的な屋上庭園においても、四季の移り変わりを楽しむことができる。
新建築 住宅特集 2011年5月号
小笠原 正豊
小笠原正豊建築設計事務所
東京都
HP:https://masatoyo.com/
小笠原正豊建築設計事務所代表。東京電機大学未来科学部建築学科准教授。博士(工学)。米国NY州登録建築家。一級建築士。
米国ハーバード大学デザイン大学院で培った建築設計観と、ニューヨークの建築事務所勤務経験で鍛えた、素材を活かした上質なデザインを提供しています。
住宅から美術館まで、どのような規模・種類・国の建築にも対応いたします。海外経験を基に、国内外の幅広い選択肢の中から最適なご提案をいたします。
どんなプロジェクトでも最初の第一歩があります。 リラックスした雰囲気のもと、お話をくわしく伺いながら何ができるのかを一緒に考えていく作業をいつも心待ちにしています。