作品詳細
名古屋駅から車で南下すること約20分。かつて多くの船が荷物を運んで行き来した中川運河の閘門(出入り口)に到着します。周辺は水辺の緑地公園として整備され、カヌーの練習に励む学生さんや観光船がのんびり遊覧するのどかな光景が広がります。
名古屋でもこの辺りまで来ると高層建築は少なくなります。空の広いゆったりした住宅街に「いろはの家」は建っています。
「いろはの家」のクライアントであるYさんが、「実家を建て替えて、二世帯住宅にしたい」と、初めて私の事務所まで来てくださったのは、夏真っ盛りのとても暑い頃でした。
大学で建築を学ばれ、家具のデザイナーであるYさんは、建築家との家づくりが長年の夢。ところが、お母様はじめ他のご家族の方は、新しい家で早く暮らしたいとの思いからハウスメーカーでの家づくりをご希望です。
「建築家」の家づくりに憧れるYさんと、「メーカーの標準的な家」を望まれるお母様とでは温度差が出るのは当然のこと。 Yさんの意向に沿ったプランはお母様にはしっくりしないし、お母様の意向に沿ったプランになるとYさんとの思いからかけ離れてしまいます。そして「両者の意向を全て盛り込んだプラン」では予算的にNG。
じっくり時間を掛けて、みなさんの要望を少しずつお譲りいただき、やがて、Yさんにもお母様にもベストな案が導きだされました。新しい家に早く住みたかったお母様には長い道のりだったと思うのですが、Yさんご一家にピッタリな家になるためには必要な時間だったと思うのです。
最後まで争点となったのは、住まいの中心にある中庭でした。この中庭については、Yさんの要望を叶えたものですが、そのためにお母様にお譲りいただく事も出てしまいました。しかし、住まいが出来上がった今では、この中庭が、お母様一番のお気に入りの空間となってるそうです。
原田 久
Dikta Architects office 一級建築士事務所
愛知県
https://dikta.jp/
愛知県豊川市の設計事務所です。
クライアントの想いを大切に、丁寧な家づくりを心がけています。