作品詳細
農業振興地域に指定された棚田が南と西に大きく広がる敷地に建つ、家族3人のための住宅である。
南から北へ段々と下がる棚田のつくる断面的環境と、西へ望む鎮守の森へと続がる平面的環境を持つこの敷地に対して、1階では南北への抜けを、2階では東西への抜けを作ることとした。壁、床、天井を線として扱い、その線で構成した6本の門型フレームを、北から南へ、東から西へと650mmずつ高くなるように3本ずつ並べて重ね合わせた。壁と天井にあたる表面は内外部とも150mm前後の縦目透し張りで揃えることで、内外の視線が滑らかに抜けることを意図している。
1階部分では、建物の北から、前室、リビング、ウッドデッキ、庭を抜けて棚田の法面へとまっすぐに、そして南からは、フレームのずれを通して2階のダイニングや書斎へも風景を繋げた。2階部分では、天井のフレームのずれは排熱や換気、採光のためのハイサイドライトとなる。また、シューズクロークやパントリーなどの収納やトイレを左官仕上げで作られたボックスの中に納め、フレームの間に適宜挟み込んだ。
それらによってできたのは、朝の光で目覚めたり心地よい風の中でうたた寝したりしたい、どこにいても相手の気配を感じていたい、けれど収納は沢山ほしい、という建主の要望に応えた、居場所によって光も、風も、音も、空の広さも、流れる風景も異なる、そして、内外が連続する、ひとつながりの、「風景を通す家」である。
写真:上田宏

井原 正揮 井原 佳代
株式会社ihrmk一級建築士事務所
東京都
HP:https://ihrmk.co.jp/
クライアントの考えや要望を丁寧に咀嚼・消化することで、様々な変化に耐え得る空間をつくること、それが建築家の最も重要な役割だと考えます。
本当に求めているものは何か、必要なものは何かを、お客様と私たちで見つけることができたら何よりの幸せです。
<経歴>
井原正揮
1980 福岡県北九州市生まれ・愛知県豊田市育ち
1998-2002 名古屋大学工学部社会環境工学科
2003-2006 東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻
2007-2014 シーラカンスアンドアソシエイツ
2015 ihrmk開設
2016 株式会社ihrmk設立
名古屋大学非常勤講師
2020- 駒沢女子大学非常勤講師
井原佳代
1979 東京都生まれ
1998-2002 神奈川大学工学部建築学科
2003-2004 キングストン大学大学院美術・デザイン・建築学部
2009-2016 シーラカンスアンドアソシエイツ(プレス)
2016 ihrmk参加
2017- 神奈川大学非常勤講師
2022- ICSカレッジオブアーツ非常勤講師
<受賞歴>
2015 「風景を通す家」Bronze A’ Design Award 2015
2018 「ひな壇基礎の家」リネアタラーラ オーダーキッチン グランプリSHOW 2018 グランプリ
2020 「はつせ三田」2020年度日本建築家協会優秀建築選100選
「はつせ三田」2020年度グッドデザイン賞
2021 「はつせ三田」東京建築士会住宅建築賞2021
「はつせ三田」令和3年度日事連建築賞小規模部門優秀賞
「はつせ三田」JID AWARD 2021 インテリアスペース部門入選
2022 「miike」第53回令和3年度中部建築賞一般部門B特別賞
「はつせ三田」第47回東京建築賞共同住宅部門最優秀賞
<掲載>
2014 「風景を通す家」新建築住宅特集2014年12月号掲載
2015 「風景を通す家」EDITION29 014掲載
「風景を通す家」Lives vol.82掲載
「風景を通す家」&home vol.46掲載
2016 「はなれのはなれ」Lives vol.86掲載
「はなれのはなれ」Inred 2016年8月号掲載
2017 「はなれのはなれ」新建築住宅特集2017年2月号掲載
2018 「ひな壇基礎の家」新建築住宅特集2018年5月号掲載
「はなれのはなれ」TOTO通信2018年新春号掲載
2020 「はつせ三田」新建築2020年2月号掲載
2021 「はつせ三田」 “Penshirubiru. Collective housing in Japan taken to its limit”, TC Cuadernos掲載