作品詳細
都市の隙間に入り込む
都市の中の古い住宅密集地には、切り売りされたために発生した無接道敷地が多くある。こういった場所には新しく建物を建てられないため、どうすることもできないまま空き家や空地として残される状態となっている。このプロジェクトの敷地もそういった無接道敷地ではあったが、幸運にも接道している手前の小さい集合住宅の所有者が当敷地を取得できたため法規上は共同住宅の増築という形として、この敷地での住宅の建築が可能となった。
つまり、戸建住宅のようであっても共同住宅の法規に則って窓先空地や道路への避難経路の確保をしなければならない訳だが、狭小地かつ既存の集合住宅の階段が通路を塞いでいたため、それらの確保が大きな課題であった。(手前の共同住宅は完了検査済証のない違法建築物であることが判明したため、まずはその調査・改修を行うことからスタートした。)また、四周を建物で囲まれた敷地であっても採光通風等に配慮した居住空間を獲得しなければならなかった。
それらの解決のために、新しい建物を十字型平面として四隅に空地を確保した。1つは窓先空地のため、1つは採光通風と共に眺望を確保するため、1つは敷地形状に対応しながら最大限大きな建築面積を確保するため、もう一つは集合住宅の外階段との離隔距離を確保するためのものである。
そして、敷地境界を超えて周囲の建物の凹凸と混じりあうことで、既存の都市の文脈に参加しつつ、新たなレイヤーが生まれるきっかけとなることを目指した。
写真:千葉顕弥

井原 正揮 井原 佳代
株式会社ihrmk一級建築士事務所
東京都
HP:https://ihrmk.co.jp/
クライアントの考えや要望を丁寧に咀嚼・消化することで、様々な変化に耐え得る空間をつくること、それが建築家の最も重要な役割だと考えます。
本当に求めているものは何か、必要なものは何かを、お客様と私たちで見つけることができたら何よりの幸せです。
<経歴>
井原正揮
1980 福岡県北九州市生まれ・愛知県豊田市育ち
1998-2002 名古屋大学工学部社会環境工学科
2003-2006 東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻
2007-2014 シーラカンスアンドアソシエイツ
2015 ihrmk開設
2016 株式会社ihrmk設立
名古屋大学非常勤講師
2020- 駒沢女子大学非常勤講師
井原佳代
1979 東京都生まれ
1998-2002 神奈川大学工学部建築学科
2003-2004 キングストン大学大学院美術・デザイン・建築学部
2009-2016 シーラカンスアンドアソシエイツ(プレス)
2016 ihrmk参加
2017- 神奈川大学非常勤講師
2022- ICSカレッジオブアーツ非常勤講師
<受賞歴>
2015 「風景を通す家」Bronze A’ Design Award 2015
2018 「ひな壇基礎の家」リネアタラーラ オーダーキッチン グランプリSHOW 2018 グランプリ
2020 「はつせ三田」2020年度日本建築家協会優秀建築選100選
「はつせ三田」2020年度グッドデザイン賞
2021 「はつせ三田」東京建築士会住宅建築賞2021
「はつせ三田」令和3年度日事連建築賞小規模部門優秀賞
「はつせ三田」JID AWARD 2021 インテリアスペース部門入選
2022 「miike」第53回令和3年度中部建築賞一般部門B特別賞
「はつせ三田」第47回東京建築賞共同住宅部門最優秀賞
<掲載>
2014 「風景を通す家」新建築住宅特集2014年12月号掲載
2015 「風景を通す家」EDITION29 014掲載
「風景を通す家」Lives vol.82掲載
「風景を通す家」&home vol.46掲載
2016 「はなれのはなれ」Lives vol.86掲載
「はなれのはなれ」Inred 2016年8月号掲載
2017 「はなれのはなれ」新建築住宅特集2017年2月号掲載
2018 「ひな壇基礎の家」新建築住宅特集2018年5月号掲載
「はなれのはなれ」TOTO通信2018年新春号掲載
2020 「はつせ三田」新建築2020年2月号掲載
2021 「はつせ三田」 “Penshirubiru. Collective housing in Japan taken to its limit”, TC Cuadernos掲載