作品詳細
二方が道路に面した敷地に、平家で建つ住まいです。
通風採光のためにいくつも庭をちりばめた間取りでは、広がりをより感じさせるため主庭に面して室を斜めに雁行させ、大きな平面形に対しては回遊性や曲折する動線で変化や利便を図っています。 軒の深い大屋根の重なりは住まいの外観に落ち着いた陰影を与えるとともに、屋根をそのままあらわした室内は、おおらかに包まれた安らぎを醸しています。一方深く大きな軒は冬の山陰では室内を充分な光で満たしてはくれません。天井の隅に設けた天窓の、障子を透過した光はその下の斜めの壁で反射して拡散し、室内を柔らかな光で補います。
深い軒の下、外壁に張られたスクラッチタイルは一枚一枚が異なる表情を見せています。その壁面には、さりげなく模様張りをしのばせました。
おおらかで包容力に満ち、表層的な美ではなく内面からにじみ出る魅力を備え、ずっと前からそこにあったようでありながらみずみずしさ新鮮さを備え、時間とともにますます醸成していく、品位ある建築・・・
そのような住まい願って心を込めて設計させて頂きました。
木村 哲矢
木村哲矢建築計画事務所
大阪府
https://tetsuyakimura.jp/
■ 住まいは 身体の居場所や家財の置き場所にはとどまらず 心の場所でありたいと思います。言葉や数値で捉えられるものだけではない何か を住まいに込めていきたいと考えています。
■ 明るさとともに陰の心地よさを、広がりとともに狭さ・低さがもたらす落ち着きを活かした、奥行のある生活空間を考えてまいります。
■ 生活と、光と、風と、素材とが響きあう素直で正直な空間を提案します。
■ 時の経過とともに人も住まいも育っていく、そのような住まいを目指してまいります。
日本の風土気候に培われた住まいの知恵と趣きを活かしながら、同時に現代的な要素も素直に盛り込み、日々の生活に「ほっ」とする居心地と「はっ」とする新鮮な歓びを見出す“心が新しくなる住まい”をつくっていきたいと考えています。