作品詳細
枚方の市街地にほど近い小高い丘の上に建つ木造二階建ての住まいである。敷地の北側からは枚方の市街地を通して大山崎方面を、そして南側は遠く生駒方面を見渡せる眺望の良い環境である。この恵まれた環境を生かしながら庭と一体となった住まい、そして緑豊かなこの場の環境をつくり出そうと思った。夏の強い日差しを遮り、風通しを考慮し、日本建築の伝統である軒の深いすまいとしている。そして、冬の陽だまりや庭と一体となった居住性を求めた結果、斜(ハス)に折れ曲がったプランとなっている。それによって南側は、片流れ天井のゆったりとした空間の居間から食堂へ、そして和室へとつづく水平の流れるような拡がりのある空間をつくり出している。これに対し北側は、坂の下からの見上げを意識し、寝室と子供室を塔に見立て、垂直性を強調したデザインとしている。いいかえれば、水平の流れの空間と垂直性の空間を紡いだ居住性の高い「紬」のような家となっている。斜に折れ曲がった南面は庭との一体化を計るため、ガラス引戸と嵌殺しの組合せによる大きな開口部としている。冬の寒さを考え、壁の中に引き込んだ和紙貼り障子は、必要に応じて引き出せる。和紙で濾された柔らかい光が室内全体を包み込み、優しさと陰影のある空間をつくり出している。 限られた予算の中で緑豊かな住まいを求め、庭園というよりも、落葉樹を主に一本でも多くの木を植えることに専念した。特に北側のアプローチ部分は近隣とつながる大事な所であり、より多くの木を配している。木々が成長し、よりよい環境となることをねがっている。
広さ:40坪
部屋数:居間食堂、台所、個室2室、和室
家族構成:夫婦+子1人
ロケーション:都市
安原 三郎
安原三郎建築設計事務所
京都府
http://www.yasuharasaburo.com/
自然と対峙する
“自然との共生”や“ランドスケープの中で”といったテーマが叫ばれてから久しい。
もともと人々の生活は里山や田園にみられるように自然に対する本能的な恐れから雑草などと格闘しながら生活し続けてきました。
自然は人間にとって敵であったとも言えます。自然の恐ろしいパワーを考え合わせると、一度自然と正面から向き合うことが必要なのではないでしょうか。
そして“自然と対峙”することで初めて自然の恩恵を蒙ることができるのではないでしょうか。言いかえれば自然と人間が“拮抗と融合”の微妙なバランスをとることが最も大切なことだと思います。
豊かで自立した住空間を作り、そして自然と向き合うことで自然の恵みと調和し、人工と自然が“拮抗と融合”の美しいグラデーションを見せる。そういった住まいを作り続けたいと思っています。